第6話 神殺し...(其の2)

『さあ、悪意よ増幅しろ。』

そうした発した瞬間、不可触の腕がアローンたちの胸へと迫る。

伸びた腕は彼らの心の中にある、『悪意』を探しているようだ。

少しずつ増幅する黒く醜い感情。

何かを壊したい殺したい無くしたい消したい。

アローンの赤黒い眼光は黒一色へと変色し、オエンたちの青白い眼光は...

何も変わっていなかった。

「そこの元破壊者と、俺達審問官はココのできが違うんだよ!!」

そう言って胸をバンバンと叩くオエン。

うんうんと頷くトューン。

「俺たちが!!ココん中に!!どれだけの正義を抱えて生きてんのか、お前は知らないだろ!!」

「理不尽に奪わせたくない、奪わせない、そうして冒険者として生きてきた。醜い同業者、敵国からきた裏切者をたくさん見てきた。冒険者になってなお、そういうやつらはどうしようもできなかった。」

「そう言う日々を過ごしていると俺達に声がかかった。審問官にならないか?って。」

「奪われそうになった時、奪われたときにすがられる冒険者が、どうして依頼主を裏切れようか。そんなことはあってはならない。」

「そうやって、悪意を持って人と関わるものを消したきたのが俺達。」

「俺たちが悪意を持って生きてどうする?」

「0に何をかけたって0。悪意が0の俺達にそんなちんけな術が効くと思うな。」

淡々と語る2人。

「それに、お前もだ。アローン。」

「心入れ替えたんじゃねぇのか!!冒険者として生きていくんじゃねぇのか?正義の味方するんじゃねぇのか?」

「こんなところで悪意に溺れるような器なのか。」

『ああ、盛り上がってるところ悪いが、この程度の術が効かなかったぐらいで我に勝てん。残念だが、効く効かないなど正直どうでもいい。』

—何も聞こえない。何も見えない。ただただ感じるあの時と同じ破壊衝動。

かろうじて抑え込むがオエンたちに攻撃しないようにするだけで精一杯。

溺れるのか?身を任せるのか?抗わないのか?ダメだよな。甘えだ。反抗しろ。自分で決めたことに責任を持て。こんなところで溺れるな、沈むな。落ち着け、落ち着け、落ち着け!!

「あいつ、動かないな。」

「そうやな。あいつなりに抗ってんねやろ。」

「ここは俺達で耐え忍ぶしかない、兄者。」

「俺が護る。お前が攻めろ。」

「らじゃ。」

「シールド!!」「かーらのープロテクション!!」

生成したシールドを両手で持ち、目の前には護力によって生成された防護壁が。完全防御態勢をとるアローン。

光のように飛び出すトューン。

『しょうもない。その程度でどうにかできるとでも。』

まさか、この程度で終わるわけがない。

透明化、分身。

自身は透明化し、分身を10体生成。

分身で誤魔化している間に奇襲といったところか?

『透明化したとして、殺意なるもんが隠れていなければ意味はない。』

無に向けて、悪意のエネルギーで作った魔弾を撃ち込む。

「そうくるよな。」

形態が変わって核の場所が嫌でも分かるほどの強い力を感じる。どこに刺せばいいか分かる。力を開放したからこそ、今回は核にダメージが入ると分かる。

分身体の一つが急に動きを変え、神の核に向けて刃を突き立てようとする。

透明化させた分身に殺意を載せるなど、基本中の基本。

完全に俺たちのこと舐めてるな。

完全なる死角、ノーガード。ダメージが入らない訳もなく、背中から突き立てられて短剣によって核に傷が入る。

分身、透明、気配遮断、殺意の分散

この四つを駆使し神を翻弄するトューン。決定打にこそなりえないが、主火力であるアローンの復活までの時間稼ぎには十分。

悪意の神なだけあって苛々としているのがオーラとして出てきている。

ちまちま攻撃されるとイラッとくるんだろうな。

わかりやすい貯めの動作、推測...範囲攻撃。

「俺の後ろだ!!」

颯爽とトューンはオエンの後ろの隠れる。

地面がぐらぐらと揺れ高エネルギー体が神を中心に発生する。

「レジスト-マジック。」「鉄壁。」「聖なる障壁。」「そして、気合。」

エネルギー体が収束した次の瞬間、悪意に満ちたエネルギー体が神を中心に、球状に広がる。

「重い!!重い!!重すぎる...。ウォォォォ!!耐えろ!!俺ぇぇぇぇぇ!!」

じりじりと踏ん張っている足がすべり始め、衝撃を受けている盾も砕けそうになっている。

「クソッ!!割れる!!セカンダリーシールド!!」

もう一枚のシールドを生成し重ねるが、セカンダリーは強度が低い。

「チクショー、紙装甲じゃねぇか...。」

ッ!!

「トューン、レイジ短剣をシールドに...」

片手でなんとかして盾を持ち、短剣を取り出す。

「せーのっ。」

カンッという音とともに盾の時が止まった。いや、崩壊が止まった。依然としてオエンが構えていないと押される。それに、物質ではなく、護力によって生成されたものだ、停止時間はあまり期待できない。

「長いし重い、もってもあと20数秒だぞ?!いつまで続くんだ?」

オエンの顔はいつになく真剣かつ焦っている。

「おいアローン、兄者が頑張ってんだ。早く帰ってこい。」

べしべしとアローンの肩をたたくトューン。

「いい加減帰ってこい!!死ぬぞ!!」

普段はしずかなのに声を荒げる。緊急事態なのだ。

それでも、虚ろな瞳で立ち尽くしているアローン。

「マリオネットでも使えれば、操作して結界でも障壁でも張れるんだが...。」

—目の前、真っ赤?光ってる?人?オエン、盾、トューン、肩叩く。

戦闘中?俺は?何をしてる。

「もう持たない。死ぬ。アニメ完結まで見てないのに!」

「死ぬ前の言葉がアニメふざけてるだろ。」

軽口を叩くものの、その顔は苦悶の表情が。

「ああ、クソ!!」

止めたはずの盾は崩壊を再開し、オエンの腕は限界を迎え、光が三人を包むところだった。

「マギア-アンチ。」

目の前からエネルギー体は消滅した。

「すまない。少し精神攻撃を喰らったようだ。」

周りを見渡してみると自分たちの足元を除いて地面が削られていた。

『凌いだか。なかなかやるな。どうやらニンゲンを見くびっていたみたいだ。』

そういうと亜空間から謎の得物を取り出し、アローンたちに切りかかる。

高速よりも数段速い。超光速でやっとついていけるレベル。霊妙なる治癒を使い回復させたが、オエンには少しクールタイムが必要。

動力変換してなおこれなのだかトューンはよけるだけで精一杯だろう。

マナで治癒魔法を常時発動させて疑似的な無敵状態を作る。

回復するなら護力は不要。魔力、攻力、疾力の三点特化。

攻撃スキルの多用、攻撃魔法の多用。

手数で押し込む。

悪意にならセイクリッド系が効くはず。

無詠唱でセイクリッド系の魔法を乱発しながら、ディーサイド、トツカノヤイバを乗っけた刃で切る、切る、切る。

神の武器なだけあって、打ち合っても全く壊れる気配はない。なんならこちらの方が壊れてきている。

急に大鎌の柄を外したかと思うとそこに大剣を刺した。

先端は大鎌の刃が付き、柄以外の部分は大剣の刃。それに加えてアローンによる両手持ち。威力は申し分ない。

おまけにレイジだ、ドラゴンと吸血鬼のエッセンスが混ざり合い、アローンの眼光のように赤黒く輝き始める。

神の返り血だ、斬撃性能の上昇は著しいに決まっている。

天罰スカージ。」

天より現れた剣が振り下ろされるかのように、強力な斬撃が神を襲う。

轟音と衝撃で地面がカタカタと揺れる。

『さすがに...これは重いな。そもそもスカージなんてどこで覚えた。』

斬首ギロチン

なんだ、急に視界が?あれは我の体?

首が吹っ飛んでるのか?どうすればニンゲン如きがそこまでの力を出せる?

「俺たちが介入できる隙はなさそうだな。動力変換を習得しないとどうしようもない。それより大丈夫か兄者。」

「砕けそうだった。危なかった。まだまだ鍛錬が必要だなと思った。結局元破壊者に頼っちまった。」

「そんなん言ったらディーサイドとかの時点でアウトやった。気にするな。」

「せか。」

「「あ、首が吹き飛んでる。」」

「胴体や、核は!!」

どっちから生える?頭から?核があるなら普通そっちから。神は規格外、想定外、常識外。

俺からの距離を計算するに、近いのは胴体、となると頭から生えるのか。

だとすれば、生えた瞬間に核が移動するのか。

『答えは両方だ。』

神は分裂した。頭から再生と胴体から再生。核の反応が二体の間を行ったり来たりしている。

『見るからにあの二人、実力不足。』

『本当に雑魚すぎるね☆ついて来れてないもん。』

『となれば、二対一で確実にお前を殺せる。』

人格が渋滞してるな。二体に分かれたからか。

といってもさっきの状態を基準に7割ほどの実力に下がっている。さすがに制約なしでの分裂は神でもできないか。

それでも厳しいのは事実。

あいつら二人はマギアを知ってる、次元界を知っている。動力変更さえできればついてこれる。

「感じろ!次元界を、マギアを。お前たちに動力変換を無理矢理刷り込んだ。一度使えば体が順応する。失敗すれば死ぬ。だが、限界突破・改を使っていればできるはずだ。」

「こうなりゃもう、一か八かだ。かますぞ。」

「らじゃ。」

動力変換...、ニンゲンの愚かな挑戦で、つい最近まで誰も使っていなかっただろうに、こいつら本当にニンゲンなのか?

1人は対価と代償臭い、二人はクロノスと絶対につながっている。


説明(知らなry)

何か不明点あれば教えてくれるとここに説明、書きます。

矛盾あれば指摘してくれるとありがたいです。直すor無理やり成立させます。

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