第6話 神殺し...(其の1)
ギギギィという重苦しい音と共に扉が開く。
「不穏な空気というか、重苦しい空気というか、とりあえず長居したくはないと思う程度には禍々しい空気だな。」
結局どんな空気だよ。
扉の先にあった階段を駆け下りていく、アローンたちが降りていくのに合わせて壁の燭台に青い炎が灯っていく。
階段を降りた先には、二本の剣でできた十字架に干からびた「ナニカ」が発光している杭で磔にされいた。
それを目にした瞬間、この邪気の源はコレに違いないと確信した。
「こいつ...これで死んでねぇんだろ?いやぁ...気持ち悪ッ!!」
てっきり会合すれば即戦闘になると思い込み、魔法の準備をしていたがどうやらそういうタイプのやつじゃあないらしい。
ならば、準備だ。普段の戦闘ではまず使うことがない超火力特化型スキル及び魔法。
超火力の代償はタメが必要なこと。たかがタメ数秒でも戦闘中では致命的な隙を晒す。あとは封印の解除方法さえ分かればいいのだが。
「ダメ元で聞くんだが、コレの封印の解除方法ってわかるか?」
「巷で聞いたことあるのは術者が解除魔法唱えればいいって話や、け、ど、神を封印したとなれば神やろうし、神やなかったとしたら術者はとっくのとうにお亡くなりや。」
「そうだな。まあ、絵本とか、伝説通りなら、王道パターンはこの剣を引き抜くとかじゃないか?」
どうしたものか、と悩んでいると
『君〜、あるいは君たち〜、こいつの封印解除方法探してるんじゃあな~い〜?』
「「「は?」」」
なんだこの声。
『簡単だよ~、その剣から引きずり降ろしてごらん?ソイツは直に動き出すよ~。』
ふにゃふにゃした喋り方は置いておいて、剣を引き抜けば封印解除。
「オエン、トューン、これからお前たちに魔法をかける。そして封印解除と同時に大技を叩き込む。初撃でやりきれるとは思っていないが大きなダメージは与えられるはずだ。」
「ラジャー!」「了解。」
「マルチディーサイド、トツカノヤイバ・参、魔力向上、攻力・護力・疾力強化。」
限界突破、不絶光速、動力変更、完全装甲、ハイセンス、アドレナリンラッシュ、それぞれが、必要な自己強化をすませる。
「ほいじゃ、」
「大技一発」
「「行きますか。」」
右にオエン、左にトューン、各々の武器を構え、目の前のナニカに対峙する。
「「我らが正義の名の下に、眼前に立ちふさがりし万物を、裁く!!」」
白銀に輝き出す武器、準備はいいぞとこちらに視線を送る2人。
それを見て頷き、
「光速。」
ナニカへと突進し、十字架の剣を砕く。
ドサッという音と共に、地面に倒れるナニカ。
刹那、ナニカに黒い霧のようなものが集まり、干からびた体に潤いが戻ってくる。
「今だ!!」
「「ジャッジメント!!」」
大槌と大斧によってサンドイッチにされるナニカ、ギチギチと音を立てながら徐々に大斧によってその体は切られていく。
そして、ガコンッ!!と大斧と大槌が衝突する音と共に両断された。
上下に分断され転がるナニカ。
「やったか?なんて言わないぜ。こいつは絶対生きてる。畳み掛けるぞ!!」
勢いそのままに、魔法、打撃、斬撃を浴びせる。
されるがままに蹂躙されるナニカ。
粉微塵になったと思われたナニカ、何もない所から声が聞こてくる。
『寝起きから暴行、なんて無礼な奴らだ!こっちは神様だぞ、何様だ?』
突然の神のものと思われる声にびくっとする三人。
「喋った...。しかも、ヒト語だ。」
『ああ、こっちのほうが聞き馴染みあるか。』
『あー、あー。』声を整えるナニカ。
『やぁ~君たち~、私の封印を解いてくれたのはぁ~君たちかなぁ~?』
この、ふにゃふにゃした喋り方、さっきまで聞こえてたアレか...?!
『自分で音声ガイド作ってたんだよねぇ~、いつか私を起こしに誰かが来るだろうねぇ~とか思ったからさぁ~。』
「悪かったな起こすんじゃなくて、叩き起こしちまったようで。」
オエンが挑発気味に言う。
『本当にぃそうだよぉ~。熱烈な私の信者がぁ~起こしに来てくれたと思ったのにぃ~。』
「残念なことに俺たちが来ちまったという訳か。」
『そうだねぇ。そ、れ、に、私が何の神かを知らないからぁ~、あんな無礼なことができたんだろうねぇ~。』
「封印されてたんだからどうせ悪人、いや邪神の類だろ?なら正義の名の下にお前を排除するまでだ。そこには礼儀もクソもない。」
『そうか。』
次の瞬間、全身を赤い衣類で包んだ男とも女ともとれる人間の形をしたナニカが顕現した。フードのようなものをかぶっていてその顔はよく見えない。
「お前の言葉をそっくり借りよう、我が悪意の下に消えてもらう。」
消えたッ?!
「遅い。」
次の瞬間アローンの顔面をナニカの腕が貫通する。
「アローン!!」
オエンが声を荒げるが、また次の瞬間、今度はアローンの大鎌がナニカの首を刈り取る。
「古典的な方法だが神も引っかかるもんなんだな。」
デコイを出し自身は透明化、気配遮断等、隠密スキルと隠密魔法の重ねがけにより無と化していたためか神すらも認識が遅れた。
「カタチは人と同じだが、首を切ったごときで死ぬ訳ないd...」
さらに、バッサリとトューンの大斧によってその頭部は分断されるが、
「神が喋ってるだろう。遮るなよ。」
やはり易々と再生してくる。
「止めるぞ。」
「りょ。」
オエンの指示の下トューンが動き始める。
「神様よ~殺れるもんなら殺ってみろ~。」
まさかのスキルではなく、ガチの挑発だ。
「神に挑発とは...先刻の発言といい、愉快な頭してんな。」
まんまと引っかかり突っ込んでいく神。
衝突した瞬間、神の動きが完全に停止する。
よく見てみると、オエンとトューンの時限の刃は白く輝いていた。
衝突の瞬間、トューンは超光速で近づき、オエンが刃を刺すタイミングに完全に合わせて刺した。
速すぎて確認できなかったが、今、魔眼で見た様子だと核のようなものがあるな。俺達人間が魔法を使うための核に似ている。
「心臓部、核のようなものがある。そこを攻撃する。」
レイジで赤く輝く大剣を心臓部に投げつける。意図を理解したのかそれを大槌で打ち込んでいくオエン。裏からはトューンが攻撃している。
「貫け。セイクリッドネイルスピア。」
魔法で顕現させた聖なる槍をさらに心臓に投げつける。あらゆる方向から攻撃されている核だが全く効いていないように見える。
ディーサイドも、トツカノヤイバも効果時間は切れてない。なのになぜ?時が止まっているからか?
「「動き出すぞ!!」」
オエンとトューンがそう言った瞬間ナニカは動き出す、が、核はバラバラに砕けた。
「じ...時限魔法なんてい...つから存在していた...?」
流石の神も時限関連の力が地上にあるとは思っていなかったようだ。
それに時限魔法ではなく、時のエッセンスだ。
さらに、オエンの短剣はアローンたち全員を刺し、トューンの短剣はナニカを刺していた。
自分たちは加速、相手は減速、これでより戦いやすくなる。
—あの挑発野郎に殴りかかった後だ、急に核にダメージを入れられた。体の中を循環させて喰らわないようにしていたのに、だ。それに思考がまとまらない、世界が遅い。いつ時限魔法を使った?クロノスの野郎は人間如きにその力の断片を与えたのか?なんなんだ?このニンゲンども。そもそもこの肉体にダメージが入るのがおかしいだろ?わからない、わからない、わからない。
ああ、うざい。面倒くさい。せっかく起きたと思ったらこれか。苛々するな。
「もういい。お遊びは終わりだ。眠気覚ましのいい運動になった。」
そう言うと、肉体はドロドロと崩壊し、砕けた核は再生される。
何かが来ると警戒し距離を取る三人。一応魔法でつついてみるがびくともしない。
そして核はそのまま膨張し、中からは黒いモヤに包まれたナニカが出てきた。モヤの中は悪魔のような見てくれをしていた。
『ヒトの姿はおしまい。ここからは正真正銘、「悪意の神」としてお前たちの相手をしてやろう。』
姿が変わったとて、やることは同じ。
三人が攻撃に戻ろうとした時だった。
『意志のあるものは誰しもが大なり小なり悪意を持つもの。』
悪意の神がしゃべり始める。
『神でさえも。そして、それを操れる我は誰しもを暴力兵器へ変貌させることができる。増幅させ、悪意の方向を決める。』
ゲラゲラ笑いながら話す神。
『神の癖して争い始めるんだよ。自分こそが至高の神だと。神でさえ操れる俺が、お前たちの悪意を少しでも弄ってみろ?お互いに殺しあうぞ。』
ギャハハと気持ち悪いぐらいに笑う神。そして笑いが収まると
『さあ、悪意よ増幅しろ。』
説明(知っててもry)
悪意の神
神々の悪意を増幅させて遊んでいたところ粛清されそうになった。が、殺そうした神々をことごとく同士討ちさせ逃げ続けていた。相反する神、善意の神が激闘の末封印に成功。この時に善意の神が勝っていなければ世界は崩壊していただろう。
え?こんなんにアローンたち勝てるの?
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