第5話 プレデター級冒険者へ...(其の2)

 「2.1.1で行く。俺がウォーターとファイア残りは二人で何とかしてくれ。」

三方向に散らばり、各々の前にいるドラゴンを狩りにかかる。

真ん中の二体は駆け寄ってくる一人の黒鎧にブレスをお見舞いしようとするが、アローンは武器を二個持っている。片手で軽々と二体の首を切り落とす。

右のウィンドドラゴンは、風魔法のバフで速度が上がっているが、トューンの方がよっぽど速い。大斧は使わず、脳天に短剣を突き立て、そのまま頭を引き裂いた。

残ったサンダードラゴン、オエンに猛攻をかけるも全くダメージが通らない。少しずつその距離は縮まり、心臓に短剣を突き立て倒した。

「気を引き締めろと言われたけど流石に、ノーマルじゃこの程度だよな~。」

—82-84階層

属性と数が増えただけで何ら問題はなし。

—85階層

扉の前で順調に進んでいた一行の足が止まる。

「なぜここに燭台が。」

「蝋燭10本、その内5本に火が。」

「5歳の誕生日かな~、オメデトー!!なんつって。」

ニヒヒと笑うオエン。

「多分それ面白いと思ってんのお前だけ。少しは空気よめ。」

すかさずトューンが突っ込みを入れる。

「しゃーねぇ、しゃーねぇ。だってもう審問だと思ってねぇもん。無心にもならなきゃ、真面目にもならんねや。」

「ああ、そう。」

諦めと呆れが混ざったようなトューンのことなど知らず

「うん、そう!」

など、呑気なオエン。とても迷宮85階層にいるとは思えない会話。

「雑談するのは勝手なんだが、これについてはどう思う。」

燭台を指差し話を本題に戻すと、オエンも真剣に考え始めた。

「謎解かんとあかん部屋か、ボスほどじゃあねぇけどまあまあ強い敵の部屋か、この2択じゃね。確証は全くないけど。」

「悔しいけど、兄者の言う通りだと思う。」

「お前ら頭脳の方はどうなんだ。いや、オエンは答えなくていい。」

「意外だろうけど兄者の方が頭は冴えてる。昔っから地頭よくてやれば何でもできる質だった。」

「『意外にも』?一言余計だぞ。」

「俺は戦闘思考以外はからっきしでな、謎解きならオエンに任せる。」

「この天才オエンにお任せあれ。」

そうしてオエンを先頭に部屋に乗り込む。

グォォォォォォ!!

意外にも3人を待ち受けていたのはキングドラゴネス3体だった。

「これさ、完全に謎解きの流れだったよな?なんでこうなるかな~...」

キングドラゴネスト—複数属性所持の上位ドラゴン。これがエスト急になるとネームドになることもあるぐらい凶悪な魔物。1人1体ならまあ余裕を持って倒せるが、おかしい。深層とはいえまだ85階層。キングドラゴネストが出たとしても1体。85階層で急激に難易度が上がりすぎだ。

外部からのなにかしらの介入があったか、迷宮自体が特殊なものなのか。

この後の階層の様子で全てはわかる。

今はそれよりも目の前の敵。

雷、風、光の複数属性所持は属性の特徴上俊敏だが脆弱(と言っても、そこら辺のプロ級冒険者よりよっぽど硬いが。)。土、草は頑強だが鈍足。神聖、呪、特殊の万能型。わざわざ対俺たちに合わせて出現したとしか思えない組み合わせ。燭台の効果なのか、それとも燭台のある部屋がそうなのか。

「オエンは左の硬そうなやつ、トューンは右の速そうなやつ、俺は真ん中を行く。」

「しつもーん!ちゃちゃっと終わらせたいからちょっと本気出してもええか。」

「倒せるならなんでもいい、好きにしろ。」

「りょ。」「ラジャ。」

3人の空気が変わる。(1人は対して変わってない。)

「「不絶光速、ハイセンス。」」「完全装甲、アドレナリンラッシュ。」

3手に分かれて各々の目標へ突撃する。

相手も咆哮とともに自己強化を行ったようで、禍々しいオーラが溢れている。

最初に決着がついたのはアローン。

不絶光速で近づくなり斬首スカージで首を切り落とす。

相手は神聖属性持ち、もちろん自己回復手段がある。霊妙なる治癒を彷彿とさせるレベルの治癒力。瞬く間に再生していく。呪い属性持ちによる呪い体制で回復妨害魔法も効かない。しかしそれも氷魔法アブソリュートによって意味をなさなくなる。

己以外の全ての物質の活動を止めるほどの超低温の氷。触れた部分は半永久的に溶解することのない氷に覆われる。(クエーサーというアブソリュートと真逆の性質を持つ火魔法で相殺可能。)

スカージで落とした首は凍結し、少しの間暴れまわった後、静かになった。

ドラゴンに攻撃する余裕は微塵も与えられなかった。

 アローンが突撃すると同時に突っ込んでいったのはトューン。

普段使うことのない背中の大斧を両手でしっかりと握り縦横無尽に駆け回る。

超高速で動いて入るが、相手もそれは同じ。かろうじてトューンのほうが速いと言ったところだろう。

マルチエストウィンドカッター、マルチエストレーザー。

四方八方から飛んでくる弾幕をきれいに避ける。トューンの通った後の地面は抉られに抉られボコボコになっている。

こんな衝撃を受けても崩壊しない迷宮の耐久力は凄まじい。

雷、風、光の弾幕によって綺麗に距離を取られる。

「アヴォイドスライド、ラビットステップ」

不絶光速にさらに回避スキルを使用し、スケートのように華麗に回避したり、うさぎのように跳ね回ったりと弾幕を避けていくが、距離が詰めれない。近づけさせたがらないということは、近接は弱い。だったらやることは一つ。

「超光速、ダウンエッジ。」

光速を有に超える速度でドラゴンに一気に詰め寄り、大斧を振り下ろす。

「アクセラレーション、大車輪。」

振り下ろした大斧は更に加速し、そのまま一回転するとともに首を切り落とした。

神聖持ちの干渉で回復する可能性もある。神聖持ちはアローンのほうだが...すでに倒しているか。疾と攻のハイブリットは暗殺者が多く、トューンは暗殺者から程遠いものだった。

 視点は変わってオエン。完全装甲により防御をガチガチに固め、アドレナリンラッシュで痛みは無効化。

ウッドバインド、サンドダスト、エストフォールンロック、エストロックショット、ストーンストライカー。

様々な攻撃がアローンに襲いかかる。

「カウンター・カウンター...スタート。」

地面からは生えた枝によって縛られ、砂塵によって視界は奪われ、大量の岩がオエンを襲い、最後の一撃に硬質化した尻尾による打撃。

とてつもない衝撃波と音ののち砂塵の中にはオエンの姿がうっすらと見え始めた。ノーダメージのオエンの姿があらわになった瞬間ドラゴンは後ろへ引く。

自分の攻撃が効いていないことに困惑しているのか首をかしげている。

「そんなんじゃ、効かんねや。残念無念、どないやねん。」

これはかっこよくキマったな。フンッと鼻をならすオエン。

「それじゃあ、そろそろ終わりにしよか。」

ドスドスと走ってドラゴンに近づくオエン。

マルチエストロックマシンガン。

魔方陣5つから大量の岩弾を連射し逃げようとするドラゴン。

岩弾をものともせずズカズカと距離を詰めていく。

いよいよドラゴンが本気で逃げようとするが、

「逃げんなよ!挑発!」

瞬間ドラゴンは怒り狂いロックアーマー、森の祝福、岩盤装甲を発動しオエンに突っ込んでいく。

「カウンター・カウンター...エンド。」

今まで受けた攻撃から計算するに、俺の攻力に上乗せすれば粉砕可能。

「レッツホームラーン!!(アンガースイング)」

大槌をどっしりと構え振りかぶる。

「オラァァァァ!!」

グォォォォォ!!

ドゴォォォン!!

爆音と振動と砂塵包まれる85階層。

砂塵の開けた先にはへしゃげたドラゴンと決めポーズをカマすオエン。

「全員無傷か。」

「まあまあ、これぐらいならまだ余裕やろ。」

「そんなことより、気になるのは次の階層。」

ボコボコになった85階層を去り86階層へ向かった。

―86階層

「燭台がない...」



説ry


アローン

子供の頃に染み付いた爪を噛む癖がずっと治らない。爪がガタガタ。

趣味 無し。子供の頃は丘の上での外遊びが好きだったようだ。


オエン

自称「ダジャレキング」

カウンターが得意な護者。素の攻撃力の高さも相まって反撃力抜群。

趣味 ダジャレ研究、ゲーム(死にゲー、美少女ゲーム)

オエン曰く「俺は二次元を愛す。現実にこんな奇人好きになるやついねぇよ〜。」

頭おかしいのか、賢いのか自分でも時々わからなくなる。


トューン

オエンが言うには「神相棒サポーター

暗殺者向きのステータスだが、破壊力が高すぎて向いてない。

趣味 ゲーム(全般)

兄者のツッコミやら、散らかした部屋の片付けやらをしている。苦労人。

二面性が激しく、外の様子からでは考えられないが、家ではダラダラしている。

それでもやることはやる。


審問官

造反者の心臓を奪うために短剣を支給される。

そういう慣習らしい。回収した心臓が何に使われているのかは謎に包まれている。

リアム兄弟の短剣は特別仕様なようで...


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