第5話 プレデター級冒険者へ...(其の1)
「ここでわたくし、オエンから冒険者についての説明といたしまーす。」
冒険者として活動を始めて一週間、宿に戻るとオエンが急に言い出したのがアレだ。なぜこのタイミングで言い出したのだろうか。
「まずは階級についてだ。」
「階級はビギナー、アマチュア、プロの三段階だけではないのは知っているが...そういえば受付でハンター級とキラー級と言っていような。」
「ザッツライト!冒険者の約半分はアマチュア、4割はビギナー、1割がプロといった感じだ。強さの順は言わなくても分かるな。んで、プロの中でさらに上位の者がハンター、キラー、プレデターとなっている。ハンターはプロの上位200人、キラーは50人、プレデターは10人が選ばれている。順位の基準は簡単、強ければいい。プロ級の中でステータスを参考に順位付けされる。不満があれば戦って順位を奪えばいい。もっとも、プロ級の冒険者は多忙でそんな戦いはほとんど起きないが。んで、お前のような者は造反者と呼ばれる。造反者はどこまでいこうと造反者、たとえ反抗する意思がないとしてもだ。ビギナーは銅の、アマチュアは銀、プロは金、ハンターは空、キラーは藍、プレデターは黒のプレート。そしてお前たち造反者は鉄でできた赤色の腕輪、これで識別できる。ちなみに審問官は白色のプレートだぜ。」
なるほど、受付から説明がなかったのは昇級することがまずないからなのか。だとしたらなぜ、オエンは俺に説明した。
「普通はな...。」
ずっと黙っていたトューンが口を開いた。
「トューン、どういうことだ。」
「俺たち兄弟はキラー級の冒険者ほどの実力があり、二人合わせればプレデター級とも均衡をとれる。ようは最強の審問官ってことだ。そんなのが二人がかりで審問を任される、わざわざ階級の話をする。この意味、わかるな?」
いや、分からん。
「お前なら
「史上初の赤い腕輪のプレデター、カッコええやん。」
なんで俺が?今までにいなかったのか?そもそもどうしてこいつらは俺に?疑問符が溢れてやまない。
「なにも善意でこんなこと言っているんじゃない。兄者、説明よろ。」
オエンの雰囲気が重々しくなる。いわゆる真面目な雰囲気だ。
「俺たちは審問官。俺たちが審問するのは造反者たちだけではない。腐っている上層部に新しい風を吹かせるんだ、造反者という風を。今までの行動からお前が悪人ではないことはもう分かった。俺はお前のことは嫌いだし、したことを許すつもりは一生ない。だが実力を信頼しないほど馬鹿じゃないし、好き嫌いで物事を判断をするほど間抜けでもない。正直飽き飽きしてるんだよ。力をひけらかすプロ級にも金にしか目がない上層部にも。」
「捕捉だが、全員が全員ではないからな。ちゃんとしてるのもいる。」
「そこで俺達審問官がお前の後ろ盾となる。冒険者協会も審問官たちがバックにいるとなればそうそう文句は言えまい。」
なんで俺がプレデターになると新しい風になるんだ。聞いてみるか。
「どうして俺なんだ。」
「強い、悪人ではない、死神として名前を知られている。そして誰もやりたがらない依頼を進んでやる。しかも安価で。忌み嫌わている者が一番頼りになる、一番強い冒険者となってしまったら他の奴らはどうなる?」
「力を誇示する意味もなくなる、大金で依頼を受けることもできなくなる。」
「そういうことだ。少しは腐敗もマシになるはずだ。俺達審問官はお前を利用する。代わりに不当な扱いを受けないように根回しなどはする。お前にとっても悪い話ではないはず。」
「さあ、どうする?」
別に悪い話ではない。協力するにしろしないにしろ俺がやることは変わらない。
「協力だ。」
「これからお前には最難関レベルの依頼を受けてもらう。昇級試験はこれから二週間後。時間は短いがそれまでに功績を立て受験資格を得る。」
「了解。」
二週間、さらっと言ったが短すぎないか?
「というわけで夜ではあるが、冒険者協会へ行こう。あ、ちなみにこの計画は俺がお前に同行している間に思いついたものであってまっっったくもって公的なものじゃないから交渉には骨が折れるぜ~。」
「勢いだけで生きてるよな、兄者は...」
一番効率がいいのは未踏破迷宮の攻略らしいが...そんな簡単に受けられるものなのか。
「あ、あった。」
都合よすぎて怪しいな。これももしやオエンの計画なのでは。
ジロりとオエンの方をにらむ。
「いやいやいやいや、さすがにこれはノータッチ。運が良かっただけよ?本当に。いやいやマジで。」
「完ッ全に信用失ってて笑う。」
目が笑ってないぞ、トューン。
「深夜は受付いないから、この紙に書いてここに置いておけばOK!!というわけで~、レッツゴー!!」
行先はアルノス迷宮。つい最近フォース近辺で発見されたらしい。
今のところ探索が完全に完了しているのは21階層まで。アマチュア級冒険者たちが攻略したらしい。そこにワープスタンプが置かれていて、地上からすぐに21階層までおりれるらしい。オエンは大槌を使う護者、トューンは大斧を使う疾者、アローンは大剣、大鎌を使う万能者。バランスのよすぎるパーティ。未踏破迷宮完全踏破ならば普通プロ級十数人単位で挑む者だ。3人で挑むなどありえないが単品でも踏破できるであろう者が集まればそれはもうものすごい勢いで進んでいくだろう。
—21階層
石造りの遺跡のような造り。典型的なダンジョンって感じか。
この階層を見るにこのダンジョンは戦闘型。謎解きは苦手だが戦うだけなら話は早い。
—22階層
いよいよ未踏破領域。敵を見て表層か深層か判断ができる。
エスト級ゴブリン数十匹。一匹でもアマチュア級冒険者と十分にやりあえる強さ。この程度の魔物ならここはまだ表層だな。階層は100以上あると思ったほうが良い。
なんて考えているうちに殲滅を完了させ次の階層へ向かった。
—23-29階層
色んな種類のゴブリンが出てくるだけの大した事のない部屋ばかりだった。10階層ごとにボス部屋があるはずだがこの次はどうだろうか。そうして29階層を降りた先の扉は今までとは違うものだった。
—30階層
エストダークゴブリネスト、エストライトゴブリネスト。
上位ゴブリンであるゴブリネストのエスト級。2体でプロ級1人と互角といったところ。
まあ中層手前としては妥当な強さだろう。
まあ、一発で終わるが。
スパンと両手の武器で首を飛ばし、次の階層へと足を運ぶ。
—31-40階層
ゴブリンがオークが変わっただけで大した違いはなかった。彼らにとってはだが。
—41-50階層
トロールバージョン。別に面白さを求めているわけではないがこうも簡単に進んでしまうとつまらない。ただ50階層でオエンがトロールと相撲をし始めたのは少し面白かった。
—51-60階層
懐かしのアーマーガーディアン。
エスト級の軍隊を見たときはあの時のことを思い出して少しヒヤッとしたが、まあキュクロプスの魂があったわけでもなかったのでさっさと済ますことができた。
—61-70階層
今までのオールスター。幸いここまで魔法関連の敵がいなかったため脳筋ふたりにとっては戦いやすかった模様。
ボスはアーマーガーディアンを装備した、トロールたちだったため少しばかり手こずった。アローンのアーマーブレイカーとオエンの大槌があれば余裕で終わった。
—81階層
ノーマルドラゴン。滑空、魔法、爪や牙による斬撃、体表の鎧のごとき鱗。魔物版の万能者と言ったところ。この階層のドラゴンはファイアドラゴン、ウォータードラゴン、ウィンドドラゴン、サンダードラゴンの4属性。プロの冒険者が大量に必要な理由はこのような階層の攻略が困難だからである。どの迷宮にもドラゴンは発生するもの。謎解きがメインの迷宮だとしてもだ。ドラゴンの弱点属性の適性を持つ魔者、スキル等が必須となってくる。ここからは油断をしていると少しばかり危険だ。今までの無双状態とは違う。ビギナー級にとってのノーマルスライムがアローンたちにとってのノーマルドラゴン。油断すれば少し危険である。ここからは気を引き締めていく必要がある。
「ここからは気を引き締めていくぞ。」
「ラジャー!!」
「了解。」
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