第3話 まがい物の愛...(其の2)
「
ステータスが通常時の1.5倍になる限界突破。視覚、聴覚、触覚、危険を感じ取る第六感の機能が著しく上昇する超感覚。どちらも超強力な強化なスキルであるが、体への負荷が大きく使用後はステータス低下、思考能力低下などが起こってしまう。長時間の使用は行動不能になるほどの負荷がかかる。キュクロプスはこの択をアローン取らせるほど強大な相手であるのだ。
「不絶光速。」
刹那、アローンの姿はキュクロプスの前から消え、目にもとまらぬ速さでキュクロプスを切りつけていく。光速は一瞬だけ光の速度で移動するというものだが、不絶光速は光の速さで移動し続けるというものだ。どんなに鍛えられた駆者でも情報処理が間に合わず結局一瞬しか使えないが、超感覚があることで完全に制御することができていた。相手が急に強くなったことに困惑を抱いていたキュクロプスだったが、負けじと再生を繰り返し、反撃を加えようと暴れ出す。
全身を切られれば、全身に気をつかう。それに相手が速すぎて見えなければ、喰らってから反応するしかない。そうやって意識が散漫になっているところに大きな一撃を入れる。首は貰った。
「
キュクロプスの首は切り落され、どす黒い血液が噴水の如く噴き出した。大鎌はその血を浴び赤黒く輝きだした。
さて、ここからだ。どちらから再生する?頭か?胴体か?
再生は...胴体から始まった。
胴体が本体か、それともそう見せかけて不意打ちを狙っているか。コアが胴体にあるのか、体力が尽き再生が止まるまで切り続けなければいけないのか。とりあえずコアがあるかどうか。
首なし巨人はまるでアローンの居場所がわかっているかのようにアローンのことを追い続けている。どうやら頭が無くても動けるし、俺の場所が分かるらしいな。だが、今までよりは動きが鈍い。少しづつ分断していきコアの有無を確かめる。
「ミリオンラッシュ。」
光速と高速斬撃が鈍くなったキュクロプスに襲い掛かる。そして抵抗する間もなくキュクロプスの体はさいの目切りの如く切り刻まれていく。
ここまで切ってコアが見当たらない。それに再生速度が遅い...なるほど、頭が本体で体側に再生命令を送り気を取ろうと。それでその間に背後を取って殺そうと。
魔物だって人間のように背後を狙ってくるのは当然だ。奴らは幾人もの人間を殺してきている。戦闘において何が必要なのか高い知能はなくとも本能で理解している、そしてその本能は強い奴ほど顕著に表れる。
浅はか。全部お見通しだ。
「デッドサイス。」
死神を彷彿とさせる大鎌が再生しかけの醜い肉塊の頭を一閃する。
バキンとコアが割れる音がし、同時に障壁の割れる音も聞こえた。
コア持ちのタイプだったか。よかった、楽に終わった。これで後はアーマーガーディアンを潰して回るだけだ。
アーマーガーディアンの様子がおかしい、障壁が壊れたはずなのになぜ襲ってこない。どうなってる?
後ろ振り返ると、キュクロプスの遺骸の上方で何かが紫色にぼんやりと輝いている。爆発魔法か、呪いか、どちらにしろ離れたほうが良い。
アローンが距離を取ると急にアーマーガーディアンが崩壊を始めた。
なぜ急に崩壊し始める?崩壊した鎧の元からゴーストたちが現れ、紫色の何かの元へ飛んで行っている...のか?いやちがう、あれは吸収されている。ということはあの紫色の何かは、キュクロプスのゴースト...ゴースト取り込んで肥大化していく。まさかこいつ、アーマーガーディアンになろうとしているのか...
まずい、速く止めなければキュクロプスどころの騒ぎではなくなる。
気づいたときには遅かった。崩壊した鎧の残骸が集合し超巨大な鎧へと姿を変えていく。
止まれ、止まれ、止まれ!!
できる限り鎧片を破壊したが、その膨大な数の上では無意味に等しかった。
あの大量のアーマーガーディアンたちは戦闘用ではなく、死んだときの保険に過ぎなかった。先に殲滅すべきは奴ではなかった、というわけか。
そして超巨大な鎧が完全に完成した。キュクロプスよりも数倍大きい。
手に持っている武器...大鎌と大剣ではないか。俺の真似なのか挑発しているのか、一体何がしたいんだ?
鎧の兜の目元が紫に輝き、鎧は行動を始めた。
キュクロプスは完全魔法耐性があったが、ゴーストとなった今も魔法は効かないのだろうか。浄化の魔法が効けば対処可能。ものは試しだ。
護:疾:魔、2:4:4。
「マルチセイクリッドショット。」
聖なる力で構成された魔弾が鎧に直撃する。鎧にはダメージが一つも入っていない。ということは鎧には魔法耐性がある。問題はゴーストに効くか。
物理的に砕き穴を開け中に直接に魔法をぶち込む。
攻:護:疾:魔、3:2:2:3
「飛行。加速。」
飛行魔法とスキルを組み合わせ高速飛行を行う。思いのほか鎧の疾力は高くなくキュクロプスよりも数段遅いが、大剣や大鎌を振る速度が尋常じゃない。
図体が大きい分隙間も大きい。近づくことは十分可能だ。
上下左右から襲ってくる刃を曲芸師のごとく華麗に避ける。
避けきれない分は
「
重い、重すぎる。質量も攻力も高すぎる。だがここで折れるな。
「オラァァ!!」
必死ではじき返し、気づけば本体は目の前に
「デュアルインパクト+アーマーブレイク!!」
鎧は砕け、紫色のゴーストが露出する。
「セイクリッドショット。」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙...」
声にならない声で苦しむゴースト。
効いている。それならマナではなくマギアでいく。
集中...次元界と繋がれ。体にマギアを感じる。これで仕留める。
「エストマルチセイクリッドバレッd...」
魔法を唱えようとした瞬間
「オェェ……ッガハッ……」
ひどい眩暈、吐き気、頭痛がアローンを襲う。
だらだらと口から血が溢れ出し、胃の中身もすべて吐き出してしまった。目や鼻からは血が垂れている。視界が真っ赤に染まって行く。意識が朦朧とする。
飛行魔法が解け、体が地面に打ち付けられる。不絶光速、限界突破、超感覚を長時間使用しすぎた。限界突破は神に許されたものだけが使える力。それを「呪われた力」で使っているアローン、他の使用者よりも負荷が大きい。神に与えられた力で神に与えられるはずの力を無理やり使用しているにすぎない。それに、負荷は治癒魔法で癒すことはできない、「神トノ契約ハ取リ消セナイ」と似たようなことだ。
負荷に押しつぶされることはあったが、それは戦闘後にしかならなかった。戦闘中になれば間違いなく死ぬ。
初の状況がよりによってネームド戦だとは。こんなときのために覚えておいたスキルがある。
「
再び立ち上がるアローン。そして詠唱を始める
「我が世界と異なる世界、我が力と異なる力、我が動力と異なる動力、我とは異なる生物...次元界生物、自然界を超越せし力を我に...。『動力変換・マギア』。」
「ウグ...ァァァ....。」
苦しい、痛い、体がどんどん変わっていく。俺が俺じゃないみたいだ。
アローンの体にマギアが流れ始め、アローンの血管が青白く光り、目には青い光が宿る。
苦しくない、痛くない、今までとは違う。これなら鎧を殺せる。
この瞬間アローンは次元界生物とも自然界生物とも言えない生物となった。
「不絶光速。」「超感覚。」
クソ鎧、ぶっ殺してやる。鎌と剣を空へと掲げ、
「
アローンの強大な力により繰り出された一撃は鎧へ...まるで巨大な剣が天より振り落とされるような光景だった。ベキッバキッと鎧が粉砕される。
忌まわしいゴースト姿を現した。お前は逃がさない!!
「セイクリッドプリズン!エストマルチセイクリッドバレッド!」
青白く光る魔法陣からは、檻が構成され、閉じ込められたゴーストに数百もの魔弾が解き放たれれる。
断末魔を上げる間もなくゴーストは完全消滅した。
とりあえず、これで終わりか。
フーっと息をつき気を抜いた瞬間、
「――ッ!」
先延ばしにしていた代償がアローンを襲う。
「ハァハァ...ウグッ...」
呼吸もままならず、狭まる視界、薄まる意識。
クソッ意識が朦朧とする。倒れる前に安全場所に退避しな..け...れ....ば。
ずるずると引きずっていた体は限界を迎え、重力に抗うことをやめた。
—————夢を見た
解説コーナー(知らなくても楽しめるけど、知ってたらもっと楽しめるやーつ。)
・限界突破
神に許されたものだけが使える秘技
・限界突破・改
限界突破を多用しているものが自然と習得する限界突破の次段階。
通常の限界突破に加え、体や精神の限界を突破して活動することができる。
制限時間などはないが長時間使用すれば死ぬ。
・不絶〇〇
スキル、魔法が文字通り途切れることがないようにするもの。
基本的に一回きりのバフを持続的に使えるようにするもの。
・斬首や天罰
圧倒的火力を出す必殺技。スキルの上位互換。
作者の頭の中で、斬首の時は巨大なギロチンのようなものが、天罰の時は巨大な剣のようなものが流れています。スキル使った時に見える幻影みたいなやつです
・人間
魔力を無意識的に取り込んで活動の動力源としている。人間の体には基本的にはオドとマナが流れていて、マナは自然界から無意識に取り込んだもの、オドはマナを体内でエネルギーとしてを消費したあとの残りかす。これがオドが体内魔力、マナが自然界魔力と言われる所以。
・次元界
自然界とは別の世界。次元が違う世界。次元界の魔力が自然界に漏れ出している。
次元界側からすれば、アローンたちが次元界生物である。
別の世界の生物はその世界にもともといる生物より強くなる。
アローンが次元界に行けばアローンが強くなり、アローンの世界に次元界生物がくればそいつが強くなる。数千年に一度ゲートが開くとか開かないとか。
・動力変換
マナではなくマギアを体内に流したらどうなるのかという研究より生まれた魔法。誰も耐えられず成功例はいままで一度もなし。依頼で行った研究施設跡の調査で発見した書物に記してあった。アローンはそれを見て覚えた。
アローンが成功したの限界突破・改と同時に使用したから。体の限界を超えた力が流れ込んできたがそれを突破することができた。限界突破なしだと普通に死んでます。
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