第2話 心死してなお...(其の2)

 頭を使って戦う、感情任せに戦わない。ステータスでは補うことができない「知力」これがなければ格下にだって負ける。攻撃を喰らってもダメージがないよう護力を上げ、最低限の攻力・疾力で頭を使って戦う。悪戯に力を振るうのではない、魔法だって効果的に使えなければ意味がない。まずは武器だ。俺に1番適正の

ある武器を見つける。今までの戦闘で分かったが片手武器という武器種は俺には合わない。双剣もリーチで言えば片手剣と変わらない。片手というよりリーチの問題だな。そうなると両手で使う武器、大剣、大鎌、槍、大斧、大槌あたりがいいだろう。

 今のステータスでもプロ級1人なら勝てる、想定より多ければ引き返す。前回のように調子に乗って大人数を相手にはしない。任務で要求されていることだけをするようにしろ。

 街の武器屋で、自分の背丈ほどの槍を買い任務を選ぶ。まずは双剣使い、あいつがどれだけ強いのかは知らないが、苦戦した武器種には間違いない。速さに翻弄され見事に背後を取られた。まずは対双剣使いの訓練だ。そして双剣使いを目標ターゲットにしセラサニア国境付近へと足を運んだ。

 国境付近で破壊者狩りをしている冒険者らしい、中位の破壊者が何度か破壊に行ったそうだがどれも返り討ちにあっている。炎属性が組み込まれた戦闘スキルが強力なようだ。標的を探すため国境付近を探し回るが疾力が低いため、いかんせん走るのが遅い。数十分探しているが、なかなか見つからない。

 今日はもう休んで、今後の計画を立てるか。そう呟いて、野営の準備をする。

 近接戦闘に関してはこれからの冒険者破壊でいい。問題は魔法だ。今の俺は体内魔力オドしか行使することができない。オド<自然界魔力マナ次元界魔力マギアの順に強いエネルギーを持つ。同じステータスでも扱える魔力階級で威力や魔力効率が変わる。オドを基準とすればマナは1.5倍とマギアでは2倍ぐらいの差が開く。それに魔法の属性にも適正がある。後天的に適正をつけるなら適正のほしい属性の魔法を習得し使い続けるしかない。が、魔法に関してはなんでも使える、習得する必要はない、使いまくればいい。属性適正は無理矢理にでも習得可能。だが、この世には俺が思いつかないような魔法も属性も存在するはずだ。それに俺があると思っているが存在しない魔法だってあるはず...ならば、戦闘をする過程で相手が使った魔法を己の技として適正を上げていく。魔法をくり返し使えば使うほど魔法に関する感覚や理解が洗練される。そうすれば階級の高い魔力も感じられるし行使もできる。時間がある限り使い倒していくしかない。

 質素な飯を食べ、眠りについた。相変わらず夢の中では「僕」がなにか言っていたがそんなことはどうでもいい。

 周りで轟音が鳴響いてアローンは目を覚ました。近辺で何者かが戦闘を行っている。おそらく破壊者と冒険者だろう。もしかすれば目標の双剣使いかもしれない、急いで様子を見に行こう。音の感じからして魔者と近接戦闘タイプが戦っているのだろう...見つけた、水の魔者と例の双剣使いだ。魔者は仮面をつけているから破壊者だ...助太刀するか。

「おい、そこの魔者!俺は破壊者だ!助力はいるか!」

『頼む、今すぐ加勢しろ!こいつは強敵だ!』

 魔者の近くに行きたいが、俺の疾力では双剣にすぐ追いつかれる。

『前後で挟むようにしろ。俺は魔法で注意を引く。その隙にお前が行け。あんた攻者なんだろ。』

 考えはわかったが敵に丸聞こえではないか。いや気づいてない、こいつ思念伝達テレパシーが使えるのか。

『全部「聞こえ」てるぞ。とりあえず、作戦は理解したな。俺は一応上位だ、お前に合わせて動く。わかったか。』

 どうやらこちらの頭の中もお見通しらしい。了解。

 双剣使いを挟むように動こうとするが、相手は手練れ。全く背後を取らせてくれない。しかし、攻めてこないということは、ある程度俺たちのことを警戒しているということだ。魔者の手の内は割れてるだろうが、乱入者の俺なら虚を突くことができるかもしれない。槍のリーチを活かして優勢に持っていきたい。

 今から突っ込む。援護を頼む。

『分かった。』

――――――――――

 破壊者狩りに来て、水の魔者と戦っていたわけだが、予想外の乱入者だ。私たちの戦いを見ていて、それでも助太刀に入って来たということは実力には自身があるのだろう。魔者と双剣使いとではリーチ的に不利なのだが、そこに槍者とは...だがすぐに私を挟めなったのは槍者の疾力があまり高くない証拠。槍者のほうは疾力は高くない...消耗している魔者をなんとかしたいが倒しやすそうなのは槍者...私の疾力で間合いの内側に潜り込み狩る。

――――――――――

「相手は俺だ!」

双剣使いに突っ込むアローン。

「望むところだ。」

距離を詰めてくる双剣、近すぎては俺が不利。だがそんなことは魔者もお見通し、

「ウォーターバインド」

槍がちょうど届く距離で相手を拘束し

「この距離はいける。」

アローンが槍を突き出そうとした瞬間

「私は魔法も使えるんだぞ?マルチファイアショット。」

無数の火球がアローンを襲う。

『あいつはマナ、俺はコド。援護はするが相殺しきれん。避けろ!』

拘束したからと言って安全なわけでない。俺は何をしている。学んだことが活かせていない。反省だ反省。

「マルチアクアショット。」

魔者による相殺と、護力で余裕で耐えたが、このままではずっと守るだけ。同士討ち覚悟で殺りにいくか。

『ブラフだ、ブラフ。お前を水属性魔法を使えるように見せれば。、相手は簡単には火属性魔法を出さないはずだ。知ってると思うが火は水に弱い。俺が無詠唱で魔法を使う。お前はマルチアクアレーザと唱えろ。』

「マルチアクアショット。」

魔法を使うアローン。

『お前、作戦聞いて..た...か?え?!』

アローンの背後からさっきの魔者と比べれば劣るものの、いくつかの水球が。それに加え魔者のアクアレーザ。

大量の水魔法が双剣使いに襲いかかる。

「なかなかやるな。エンチャント<エストファイア>!」

双剣が赤く光ったかと思うと、炎が上がる。

「斬!」

炎の斬撃が水魔法を蹴散らした。これがコドとマナの差だ。相性不利などひっくり返してしまう。

『これ、俺ら死ぬかも。』


―――――――――――――――

説明欄

☆魔法について簡潔にまとめるよ☆

魔力というのはその人の魔法に関するステータスのことだよ。

魔力階級のほうの魔力はエネルギーとしての魔力のことだよ。

う〜ん。ややこしい。

今後は、オド、マナ、マギアとして扱うから、魔力=ステータスのほうだと思ってください。

属性はたくさんあって、相性不利・有利があるものないもの色々あるよ。

 アローン

承認欲求の塊だったが、それを押し殺して生きてきた。まわりに迷惑をかけたくないという思いのもと、特にわがままも言わず、いい子だった。愛を渇望していたが無意識下で押し殺していた。押さえつけていた感情が爆発して情緒がバグっている。

家族はアローンのことは愛してなかった。ただ破壊者の後継者として育てていただけ。呪いとは関係なく、あの日捨てられる予定だった。偶然が噛み合ってしまった。

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