第1話 孤独な破壊者...(其の4)

魔力極振り、後は最適な魔法で潰す!

前方には魔者、聖者。後方には攻者、護者。

前後をカバーでき、確実に仕留め切れる魔法はなんだ?

岩魔法、広範囲、上から落とす...

フォールンロックだな。この魔法は広範囲だが今の状況じゃ自分をも巻き込んでしまう。だが、魔鎧を使えば魔法防御は可能。この2つでいくか。

ステータス変更魔力最大。

「フォールンロック!」「魔鎧!」

驚いた顔をしているな。

「焦るな!これはハッタリだ!」

奴のステータスは攻力と疾力の2つが高いに決まってる。さっきの奴の動きはそうじゃないと説明がつかん。だが、なんで魔力によって作られた鎧が?いや、怯むな!

「「「うぉぉぉぉぉ!」」」

その瞬間、一同の足元には魔法陣が、上方に魔力によって作られた魔力石が。

「「魔鎧」」

護者は護力で耐えられると読んだ魔者が攻者に魔鎧を唱えるが

ドゴォォォォン!!という轟音と共に全員押し潰された。

もし、彼らが出会ったのがアローンではなければこの一党はきっと幸せな未来を歩んでいた。だがこれで終わりだ。

これで全員仕留めた。

「naught(ノウト)」

と唱え魔力石を消す。

魔力石のあった場所には、人間だった者があったがあまりにもひどい形で、冒険者プレート、装備品がないと、とても人間だと判断できる状態ではなかった。

さて、プレート、肉片、血液等を回収して一番近い破壊者協会に依頼達成を伝えるか。

それにしても、プロ級とはこんな者なのか?いや、慢心は良くない。きっと上位破壊者の中で俺が最底辺なように、あいつらもプロ級の中で最底辺だっただけだろう。

プレートは全部で8枚。プロ級のが5枚、アマ級のが3枚。おそらく俺の目標はプロ4人パーティー、おまけの4人はプロ1人をリーダーとしたチームだったのだろう。俺が起こした騒ぎで増援を求めたのだろうな。俺に増援が来なかったのは、あの呪いのせいで嫌われているからなのだろうな。そんなことを考えながら門へと戻っていった。

「仕事完了」

無機質な声が森に低く響いた。

仕事を終えたアローンは門に戻り見張りにプレートを見せ、帰ろうした、が

「噂は聞いたぜ。名家の落ちこぼれ。その上位のライセンスもどうせ裏で金で買ったんだろ。役場ではすごかったらしいがそれもどうせイカサマだろ。」

つい先ほどまで自分より格上だと思っていたやつが落ちこぼれと知り相当うれしいようだ。

「そうかもな。」

思っていた反応と違い少し驚いたようだ見張りは

「おもしろくねぇ。」

とアローンに悪態をつくが、彼にとってはどうでもいいことだった。

 依頼の報酬を貰おうと破壊者協会に来たのはいいものの、落ちこぼれがのうのうと破壊者をやっているのが癪に障るらしくアローンへの視線はよりひどいものになっていた。やはり、受付に歩いて行くまでに文句は言われる。だが、そんなことはどうでもいい。

「冒険者破壊の依頼を受けていた。完了報告をしにきた。」

自分のプレートを見せ、受付に回収してきたものを渡す。

下等生物を見るかのような受付の目は一気に恐怖の色に変わった。

落ちこぼれだと思っていた人間が、プロ級、アマ級冒険者を相手しているとは思っていなかったからだ。それも8人なんて「本物」の上位破壊者でないと為し得ないのだ。

受付はずっと黙っている。まさか依頼されていない分も破壊したのが問題だったか。一応付け加えて説明しておく必要があるだろう。

「依頼されていた人数は4人だったが、他に4人いた。邪魔だったので破壊した。」

「...」

黙り込む受付。

「い..一応聞いておきますが、誰かの戦果を盗んだわけではないですよね?」

やはり疑われるか。

「俺の戦果だ。」

難しそうな顔をして考え込む受付。

なんだなんだ、また落ちこぼれが何かしたのかと人が集まってきた。

そしてやっと結論が出たらしく、口を開く

「今回の報酬は渡します。ですが、あなたの実力が本当か調べる必要があるため、本部に行き実力試験を受けて下さい。役場で行った試験で不正を行った可能性もありますので。」

追加報酬も込みで金貨2枚を受け取り颯爽と協会から出ていった。

宿をとり休息をとるか、本部に行き試験を受けるか、二択。疲れてはいないが万が一もあるだろう、今日はひとまず休むとするか。

だが、この国はアローンを休ませてくれなかった。どこに行っても帰ってくれ、出ていってくれ、近づくな、店の評判が下がると誰も相手にはしてくれなかった。そしてまたしても町の路地裏で一夜を過ごすこととが確定した。食料と水を確保したいが金貨では買い物は難しい。なにせ金貨1枚で銀貨1000枚分の価値があるからな。手数料込みでどこかで銀貨950枚ほどと交換してもらわねばならないか。両替もしているという質屋に行くがどこも銀貨500枚だと言い張り、法外な交換条件しか提示してこなかった。これもやはり、呪いのせいなのか。仕方あるまい。物を食わねば生きていけない。水を飲まなければ生きていけない。金貨2枚を銀貨1000枚と交換した後、質の悪い食料と水を、これまた法外な値段で交換し路地裏で眠りについた。

 そのころ冒険者協会では、大事件としてプロ級冒険者達の死が広まっていた。

今まで何の情報もなく、ノーマークであった破壊者が、プロ冒険者含む8人に勝つなんてことはあり得ないことだったのだ。ピエロの面、圧倒的疾力、攻力、魔力、年は20にも届かないであろう幼い風貌。このような破壊者を見かければすぐに逃げろ、という注意が出された。

突如現れた、「強すぎる」破壊者としてアローンの存在は冒険者全員に知れ渡った。

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