第1話 孤独な破壊者...(其の3)

時を遡ること数時間前、ちょうどアローンが試験を受けていた頃だろう。とある一党が冒険者協会へと足を運んでいた。言わずもがな、クエスト受けるためである。

「みんな今日は何のクエストを受けるか?」

リーダらしき男が仲間に声をかける。

「う〜ん、僕はなんでもいいかな〜」

「私はやっぱり破壊者デストロイヤー狩りがいいです。」

「私はドラゴン退治〜!!」

それぞれが各々の考えを挙げていく。

「破壊者狩りでしょ!」

「いや、ドラゴン!」

言い合いを初めたのは、魔者と聖者。いつものことだ。そして、2人の視線はなんでもいいと言った男、護者の元へと向かう。

「どっちがいいと思う?」

「どっちがいいと思います?」

2人に視線を向けられビクッとする護者。視線が2人の間を行ったり来たりしている。悩んだ末護者が出した結論は

「じゃあ、破壊者狩りで。」

破壊者狩りだ。ニコッとする魔者、ムスっとする聖者。これもまたいつものことで護者はいつも魔者の意見に合わせている。これは、護者が魔者に対して特別な感情を抱いているからだろう。

「なんなのよあんた!いっっっつもこの子の意見に合わせてさ!なに?この子のこと好きなの?」

ギクっとする魔者と護者。どうやらこの様子だと魔者も護者に少なからず好意を持っているのだろう。

「ち...違う、そんなわけないだろ!」

必死に取り繕うが慌て方で完全にバレている。

「重要なことを忘れていた。今日、俺たちには使命任務がきている。最近破壊者の活動が活発らしい、っつーわけでそれを収めるためにプロ級冒険者の俺たちが呼ばれたってわけだ。」

「じゃあそもそも私たちに聞く必要なかったじゃない!!」

「すまんすまん、忘れてたんだ。さあ、切り替えろ、仕事だ!」

リーダーの一言で、仕事モードに切り替え真剣な表情になる。

「受付でクエストを承認しに行くぞ。」

ぞろぞろと受付へと歩いていく一党。

「今回は依頼任務の破壊者狩りで頼む。」

「了解しました。いつもいつも大変な依頼をありがとうございます。この辺りで有名なプロのチームですもんね。これからもよろしくお願いします。」

笑顔で見送る受付。

「今回はサラセニアに行く。準備しろ。」

各々が必要な物質を補給し冒険者協会に再集合。転送呪紋の上に立ちサラセニアに最も近い冒険者協会を選択。青白い光に包まれ転送される。

「ここからは徒歩だ。魔法やスキルを使ってもいいが、力は温存しておきたい。」

「「「了解!」」」

彼らはサラセニアに向かって歩き出した。


ー冒険者と破壊者

破壊者はなぜ特定の等級の冒険者を倒しにいけるのか。冒険者というのは己を世間に知ってもらうことが重要だ。だから、目立つ格好、目立つ特徴を一つや二つ持っておくことは当然だ。すると、破壊者たちはどんな格好のやつがどの等級かわかる。それを物見の破壊者が殲滅の破壊者に伝える。よって指定された等級の冒険者を殺すことができる。

逆に冒険者は破壊者狩りをするだけであって、等級をして押されることはない。殺した破壊者のライセンスを持ち帰ってそれに応じた報酬を受け取る。

破壊者と冒険者は基本はサラセニアの国境付近、吸血者(冒険者教会では破壊者と呼ばれている)と冒険者はイーコールの国境付近に多く派遣される。だから、いつ行っても標的がいて殺し合いが起こる。同業者も多いため臨時でパーティーを組むことも少なくない。



一党がサラセニア国境に向かう頃アローンもまたサラセニア国境に足を運んでいた。周りを見るとアローン以外にもたくさんの破壊者がいた。同業者が多いな。それに鬱陶しい視線が多い。さっさと国境へ向かうか。呪われた力を使い加速する。30分経った頃には国境に着いていた。国境は長い石城で仕切られて

いる。ところどころ、門があり破壊者が見張りをしている。門を通るのはどうすればいいのだろうか。

「依頼で来た。ここを通りたいのだが」

「ライセンスを見せろ」

なんだこいつは、俺のことを馬鹿にしないのか。いや、噂が届いてないだけか。

ライセンスを見せる。

ッ?!こいつ上位の破壊者なのか。全然見ないがこんなやつ昔からいたか?まあいい

「いいぞ、通って。」

「...」

ライセンスを受け取り、ついに国境を越える。ここがサラセニアの外か。石城の外はこんな綺麗なところなのか。森なんてサラセニアの中じゃ滅多に見ないし、池の水も綺麗だ。依頼にあった冒険者破壊だが、どうすればいいんだ?プロとか言っていたがどう見分ける?ん?ライセンスがまた光って...。なるほど、こちら側の物見からの情報か。今回のプロ級の冒険者は4人パーティー。攻者、護者、魔者、聖者の4人。じきにこちらに来ると。それでは、俺は肩慣らしにそこら辺の冒険者を破壊ころすか。相手がどうであれ油断はするな。なるべく不意をつけ。自分に言い聞かせながら、冒険者を探す。

小さな池の辺りで休憩している一党がいるな。戦利品を見るに破壊者俺たちを殺しに来たわけではなさそうだが、いずれ脅威になる存在だ。始末しておいて損はない。呪われた力を発動。攻力4000、そっと近づいて飛び掛かる。

「敵だ!」

リーダーらしき男が声を上げる。

それを聞いて一党は臨戦体制を取ろうとするが

「セイッ」

アローンが横に大きく剣を振ったその瞬間、轟音と共に、一党の上半身と下半身は綺麗に分かたれ、周りの木々も次々と倒れていった。池は血の色に染まり、死体や武器などが沈んでいる。音を聞きつけた冒険者が集まってくる。

「大丈夫かすごい音が鳴った...ウワァァァ!!なんだこれ死体か?!おい、みんなやばいことになってるぞ!」

なんだなんだと人が集まってくる。流石冒険者動きが速い。だがお前たちにも死んでもらう。ッ?!

「お前、その格好破壊者だろ?」

「よく気づいたな。じゃあ死ね。」

アローンの拳が男の顔面を捉える。そして次に瞬間男は池へと吹っ飛ばされた。

「あっちにいるぞ!敵は破壊者だ!注意しろ!」

対応の速さで言えば相手に手練れはいない。ならば先ほどと同じように、

「セイッ」

横の大振り。

「「「シールド!!」」」

相手は3人ほど防御結界を張ったがアローンの攻力を防ぐことができるほど強い者ではなかった。結界が割れると冒険者たちは全員死んだ。死体は11。一つ足りないか、後ろだな振り向いて一閃。断末魔と共に肉の裂ける音がした。肩慣らしにはこれぐらいして、目標を破壊しに行くか。

目標を探しているとそれらしきパーティーを見つけた。が、待て。数は4人ではないのか。なぜ8人に増えている?見間違えか?ライセンスに写っているのと見比べてみるか。いや前の4人は間違いなく目標だ。ならば残りの4人は誰だ?まあいい。殺せば4人も8人も変わらん。呪われた力をうまく利用しろ。

その前に確認をしなければ。

「おい、お前たち。プロ級か?」

「お前か。ついさっき、冒険者達を殺したのは。」

「俺の質問に答えろ。」

「そんなの答えなくても実力でわからせる。」

明らかに今までと雰囲気が違う。

「「攻力強化」」「「護力強化」」「「疾力強化」」

後方の魔者2人が攻者2人護者2人にバフをかける。

「「聖なる鎧」」「「聖なる武器」」

聖者2人も魔者2人と同様バフをかける。

「「「「行くぞ!!」」」」

4人で距離を詰めてくる。護者の後ろに攻者の陣形で二手に分かれて攻撃か。これじゃあ攻撃が通しづらいが、俺の今の疾力と攻力なら突破など造作もない。

「死ねっ」

ガキンッ!金属音が響く。クソッはじかれるか。護者であるから護力が高いと分かっていたがバフがかかっていて想像以上に固い。ならば、まず攻者から潰すしかない。

すっと姿を消し今度は反対側のタッグの背後を取ろうとするが

「さっき見た。」

行動を先読みされ目の前に大槌が迫る。ならば護力最大だ。いや間に合わない。まずい。今のステータス(攻力2000,護力50,魔力50,疾力2000)でどうすればいい。

こうなりゃ相殺だ相殺。

「オラァァ!」

おそらく上物であろう大槌とオンボロの剣。真っ向からぶつかればどちらが壊れるかは一目瞭然。

クソッ!折れた。一旦距離を取るか...

「マズイッ」

思ったように攻撃が通らず焦っていたアローンは相手の「魔法」「祈り」に意識を割くことを忘れていた。

「「セイクリッドバインド!」」「ファイア!」「ライトニング!」

手足を拘束され前から魔法、後ろからは攻者、護者が迫ってくる。

「「お前はこれで終わりだ!」」

「アンガーサイス!」「インパクト!」

やつらは俺が絶対絶命だと思っているだろう、つい先刻まで俺もそう思っていた。だが俺にはもう一つ力があるだろう。この世に存在するどんな力も使えるという力が。これを使えば逆転など容易だ。俺に攻撃が届くまであと数秒。ステータス変更は可能。魔力極振り、後は最適な魔法で潰す。


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