第55章−4 異世界の反省会は大混乱です(4)

 オレは遠乗りの準備を終えると、転移魔法を使って城下の大通りへと移動した。


 転移した場所の近くには馬車止めがあり、別の通りに抜ける細い路地があった。 その細い路地の物陰を転移先に選んだ。


 以前、ダブルデートをしたときに訪れた場所だ。


 人通りが多くて、転移先にはあまり適さない場所だけど、転移魔法は一度、オレ自身が行った場所にしか転移できないので、消去法でここになったのだ。


 それにしても、転移魔法の転移先候補を思い浮かべたとき、その数の少なさに愕然としてしまった。


 オレはあまりにもこの世界を知らなさすぎる。

 もうちょっと積極的に外出した方がいいだろうね……。


 ダブルデートをしたときの服がたまたまオレのアイテムボックスの中に入っていたので、そちらの外出着に着替えての外出だ。


 細い路地から、大通りにでてみたが、オレは問題なく、周囲の人々に溶け込むことに成功した。


 部屋着だったら、少々目立っていただろうが、外出着に着替えておいて正解だった。


 異世界パンツ事件でひどい目にあったので、オレはことあるごとに、アイテムボックス内に手に入れたものを保管するようになっていた。


 今、アイテムボックスの中には、まっさらな部屋着や下着が二十セットくらい入っている。


 仮に別の世界に召喚されたとしても、しばらくは着替えに困ることはないだろう。


 あとは……筆記用具とか、後で食べようと思ったお菓子とか、蜂蜜とか……フレドリックくんとドリアの釣書なんかも入っている。


 なぜか、枕も入っていたが……。外出準備中に、誤ってアイテムボックスの中に入れてしまったようだ。後でコッソリ戻しておこう。


 ところで……アイテムボックスの使い方って、これで間違いないよね?


 別に、家出をするわけじゃなくて、遠乗りにでかけるだけだから、荷物なんていらないけどね。


 荷物よりも、馬が大事。


 乗馬に適した服装であれば、それで大丈夫。


 相変わらず城下は人が多い。

 瑞兆続きとかで、みんな浮かれまくっており、ちょっとしたお祭り騒ぎになっている。


 人々に王都の外へ出る道を尋ねながら、オレは通りを歩いていった。


 外壁門までは少しばかり歩いたが、この国の人々は親切な人ばかりで、オレの質問に丁寧に答えてくれたよ。


 おかげで、迷わずあっさりと外壁門へと到着することができた。


 門のところに到着して、さて、どうやって、外に出ようかと悩んでいたら、商人の一団に紛れ込んで、これまたあっさりと外にでてしまった。


 この国には防衛とか、検問とかいう概念はないのだろうか?


 まあ、特にトラブルもなく、邪魔されることもなく、王都の外に出ることができたから、よしとしようか。


 街道から少し外れてヒトの気配がないことを確認すると、オレは少し長めの呪文を唱え始めた。

 消費される魔力量もそれなりに多いので、失敗しないように慎重に魔法陣の完成イメージを脳裏に描いていく。


 虹色の複雑な文様の魔法陣が地上に描かれ、空間が揺れた。


 詠唱が終わり、魔法陣が消えると、そこには見事な一角獣が佇んでいた。

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