第55章−3 異世界の反省会は大混乱です(3)
完全に煮詰まってしまったオレは、手頃なところにあった枕を抱きかかえると、ボカスカと枕に向かって殴りかかった。
「くそっ! どうしたらいいんだよっ!」
ボカボカ枕を殴った。
フカフカな枕はオレの攻撃を優しく受け止めてくれるけど、オレにアドバイスはしてくれない。
「ううううっ」
胸がいっぱい、いっぱいになって、涙がぽろぽろと零れ落ちる。
「だめだ。どうしたらよいのかわらないよっ」
枕に顔をうずめると、フレドリックくんとドリアの甘い匂いがした。
しばらく枕を抱き続けると、少しずつ、気持ちが落ち着いてきた。
気持ちは落ち着くが、知恵は浮かんでこないよ。
おそらく、このままココで悶々と悩んでいても、解決策は思いつかないだろうね。
冷静になろうよ。
冷静に……。
いつも政務に行き詰まっていたときって、オレはなにをしていた?
いつもと違う展開に狼狽えているのであれば、いつもと同じことをすれば、解決策が見つかるかもしれないな。
答えはすぐにでた。
解決策の方ではなく、政務に行き詰まっていたときに、オレはなにをしていたかだ。
「そうだ。遠乗りだった……」
こんな簡単なことも思い出せなくなっていたなんて、オレってダメダメだな。
仕事ばかりで息が詰まりそうになったとき。
一国の王として重大な決断を下さなければならないとき。
毎日が息苦しいと感じたとき……。
インドア派なオレでも、じっとしているのが辛くなるときがある。
そういうとき、オレはこっそりと城を抜け出して、城から少し離れた小高い丘を目指して遠乗りにでかけることにしていた。
ひとりでこっそりなのは、ぞろぞろと供をつて外出すると、オレに気づいた民たちがオレと話をしたがったり、ベタベタ触りたがったりするから。
護衛を振り切ることはできないけど、とにかく非公式でバレなければそれでいいのだ。
無防備にオレが外にでちゃうと、みんなからもみくちゃにされ、挙句の果てには、店の売り物や獲物、収穫物などを献上してきたりして、大騒ぎになってしまうからね。
それじゃあ、遠乗りじゃなくて、城下の視察になってしまうからね。
オレは遠乗りで気分転換をしたいんだよ。
なので、こそっと抜け出して、こそっと帰ってきて、「オレハシゴトシテマシタヨー」って何食わぬ顔でいるのが、遠乗りを成功させるための条件なのだよ。
冴えているよな、オレ!
ちょっと腰とか尻が痛いが、我慢できないような痛さではないね。遠乗りしても大丈夫だろう。
……と、自分自身の閃きにウキウキしていたオレだが、大事なことを見落としていた。
フレドリックくんが部屋を退出するときに額を扉にぶつけてしまったように……オレも動揺していて、判断力が非常に鈍っているということに気づいていなかったのである。
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