第51章−6 異世界のホウレンソウはイマイチです(6)
宰相サン相手にも、大神官長さんは全くひるまないよ。大神官長さんヒョロイ外見に似合わず、かなりのやり手なようだね。
いや、宰相サンはリニー少年の「ぼく、勇者様のお嫁さまになる」というびっくり宣言のダメージからまだ完全に立ち直っていないのかな?
「第一位、第二位、あとまあ……第五位が、オマケで伴侶として名のりを上げているのです。聖女様のお力をお借りせずとも大丈夫です。神殿よりも、伴侶候補の側にいらっしゃる方が、勇者様も心安らかに過ごされるはずです」
「なるほど……そういうことなら……わかりました」
なにやらひとり呟くと、大神官長サンは、差し出していた手をオレの首元へと持っていき、ボタンを外しにかかる。
「ちょ、ちょっと……大神官長サン?」
その手を振り払おうとしたが、大神官長サンの真剣な目に、オレはその場で凍りついてしまう。
呼吸が早くなり、全身がカッと熱くなる。鼓動が高まり、背筋にじわじわと甘い疼きが拡がっていく。
(ちょっと、これは……)
大神官長サンがなにをしようとしているのかいち早く察知したフレドリックくんが動く。
しかし、見えない衝撃がフレドリックくんにぶつかり、オレの護衛騎士は軽々と後方に弾き飛ばされてしまった。
フレドリックくんはそのまま背後の柱に激突する。
ガゼボが衝撃で揺れ、結界がきしむ。
大神官長さんの攻撃が放たれると同時にフレドリックくんは防御魔法を発動させていたが、それを上回る激しい攻撃だった。
「フレドリックくん!」
「フレッド!」
柱に激突したフレドリックくんはぴくりとも動かない。気を失ってしまったようだ。
「一介の護衛が……無礼な。無粋な真似は控えていただきたいですね」
大神官長サンは冷たく言い放つと、騎士団長サンたちを睨みつける。
それだけで、他の騎士たちは動けなくなってしまったよ。
リニー少年がフレドリックくんに駆け寄り、回復魔法を唱えはじめる。
しばらくすると、フレドリックくんのうめき声が聞こえてきた。
(よかった……)
フレドリックくんは、辛うじて生きているようだよ。
「勇者様、失礼します」
このヒトには逆らえない。
逆らってはいけない気がした。
右の首筋に、大神官長の唇がゆっくりと触れる。
「あ、あああんっっ」
注がれる膨大な熱量と、全身を支配する快楽の余韻に、オレはたまらず嬌声をあげる。
ドリア並……いや、ドリアを軽く上回る所有の印に、オレの意識が飛ぶ直前までに高ぶる。
聖女サマが怖れていた理由がはっきりとわかった。
この中で……大神官長サンがいちばんヤバいヤツだ。
「宰相閣下、これで納得していただけましたか?」
「な、なんということを……」
宰相サンの苦々しい声がどこか遠くで聞こえる。
「勇者様……気持ちがいいでしょう? 後で、もっと、気持ちがいいことを教えて差し上げますよ」
これは大神官長サンの声だ。
その甘い誘惑に、オレの全身が悦びで震え上がる。
「可愛いいヒトですね。気に入りました」
耳元で囁かれる官能的な声に鳥肌が立ち、オレの口から甘ったるい吐息が漏れる。
「勇者様。名乗りが遅くなりましてお詫びいたします。レンジアと申します」
「あ、ああっ……んっ」
首筋を軽く指で撫でられる。
体内で暴れまくる衝動と必死に戦っているオレを、レンジア大神官長は満足そうに見つめてくる。
目を合わせたらだめだ、とわかっているのに、レンジア大神官長から目が離せない。
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