第50章−2 異世界のお見合いは集団です(2)
宰相サンが淹れてくれたお茶を飲み、菓子をつまんで……って、美味いぞ! この菓子!
お茶もすごく美味しいのには驚いた。
年の功というべきなのか、リニー少年のお茶よりも美味しい。
「お気に召されましたか? これは、王都で一番人気の菓子です」
宰相サンの説明にコクコクと頷く。
「多めに手配いたしましたので、後ほどお部屋の方に届けさせます。日持ちのするものですので、ごゆっくりとお楽しみください」
オレは菓子を食べながら、コクコクと頷く。
これは……三時のお茶の時間にも食べたいぞ。
甘さ控えめな菓子だから、これならフレドリックくんも食べることができるだろう。
ドリアはお茶に参加できるだろうか。
「王太子殿下へのご助力ありがとうございました」
宰相サンが頭を下げる。
オレはそんなにたいしたことはしていないので、軽く頷くだけだ。
「で、いかがでしたか?」
「なにがだ?」
質問がぼんやりしすぎていて、どう答えてよいのかわからない。
うっかり変なことをしゃべってしまったら大変だ。
もう、いっそのこと、このテーブルの上に並べられている菓子をひたすら食べて、会話するのを拒否しようか……とまで考えてしまう。
「ぜひとも感想をお聞かせ願いたいと」
「悪質だな。ドリアを鍛えるにしても、もっと別な方法があるだろう」
眉間にシワを寄せ、不快感を思いっきりアピールする。
オレを巻き込むな。
フレドリックくんをひっぱりだそうとするな。
と目で訴える。
「楽しくはございませんでしたか?」
宰相サンの言葉に、オレは菓子を喉に詰まらせる。
ここでバカ正直に「楽しかったです」と答えてしまって、「では、王配になって一緒に王国を導いてください」と言われてしまうわけにはいかない。
「それなりに暇つぶしにはなった。が、あの書類の精度はなんだ? 上級書記官だけではなく、各機関の下級書記官の教育とチェック体制にこそ力を注ぐべきだ。もっと精度の高い書類を上奏するように励むべきだな」
「ご忠告、ありがとうございます。確かに、あのやりとりは、時間の無駄だと思いました。即刻、対応いたします」
宰相サンのところに届く書類も書記官チェックを終えた、完璧な書類だけだもんな。
まさか、あんな間違いだらけの書類が飛び交っているなど、想像もしていなかったんだろう。
オレが指摘しなくても、というか、宰相サンならもう対応策は考えて動き出しているんだろうけど、そんなそぶりは一切見せようとはしないところがずるいよね。
「勇者様のご慧眼、感服いたしました。国賓としてではなく、王配として、エルドリア国王陛下を支えていただくわけにはまいりませんでしょうか?」
「断る」
相手が直球できたので、こちらも直球で返す。
「エルドリア国王陛下の王配が嫌と申されるのでしたら、フレドリック国王陛下とでもかまいませんが?」
顔色ひとつ変えない宰相サンの爆弾発言に、ガゼボ内の空気が一気に張り詰めた。
フレドリックくんもだけど、騎士団長サンの怒気がすさまじい。
紅茶の入ったカップがガタガタと振動しているよ。
「お断りだ。宰相閣下はなにを勘違いなさっているのかわからぬが、オレは異なる世界の住人だ。縁もゆかりもない者が王配に軽々しくなってよいものではない。ましてや、王位継承争いなどには興味ない」
口角を上げると、オレは紅茶を口にする。
「なるほど。では、縁とゆかりができれば、可能なのですね」
「…………?」
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