第41章−1 異世界の尋問は楽勝です(1)
「わ、我々だけでよいではないか! いや、そもそも、なぜ、宰相に口頭報告する必要があるのだ! 報告書を作成するだけでよいではないか!」
宰相サンの命令に、ラーカス親子がわかりやすいくらいに慌てちゃっている。
「この場に聖女様がいらっしゃらないのが残念ですが、これから尋問をはじめます。さあ、フレドリック様、そんなところでぼーっと突っ立っていないで、さっさと着席してください」
と言いながら、宰相サンは騎士団長サンの隣に座り、空いているオレの隣を指し示す。
宰相サンの有無を言わさぬその威圧、魔王レベルだよ。
魔王であるオレが保証してあげる。
「はい…………」
フレドリックくんは力なく頷くと、自分の父親の向かい、オレの隣に静かに座った。
宰相サンが応接机の上にあったベルを手にとり軽く鳴らすと、扉が開いて、ティーカップを載せた盆を持った文官が現れた。
フレドリックくんも含めた人数分の茶器と、茶菓子が静かに置かれていく。
最初からこの『尋問』には、フレドリックくんも頭数に入っていたんだね――。
いつもの儀式。身分の低い順番で、フレドリックくんから紅茶を飲み始める。
ん?
なんか、オレとフレドリックくんの間に拳にして三つ分ほどの隙間ができているよ。
その隙間が妙に気になってしまい、オレがフレドリックくん側に身体を移動させると、「ぶはっ」とか言って、フレドリックくんが慌てて口元を押さえた。
「し、失礼……いたしました」
「す、すこし、こうちゃがあつかった……ようだな?」
フレドリックくんの謝罪の後に、騎士団長サンの棒読みそのものなセリフが続く。
「……うむ。少し、熱いようだな」
宰相サンが頷き、オレも紅茶を口にする。
それほど熱くはないけどなあ?
みんな、猫舌なのかな?
茶菓子を適当に口にしつつ、これからに備えて紅茶で喉を潤す。
「では……」
宰相サンとの面談、いや、オレたちへの尋問が始まっちゃったよ。
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そして……。
「はあ……なんだか、面倒くさいですね。もう、この尋問はなかったことにしましょうか?」
というのが、尋問を終えた宰相サンの感想だった。
だからやめようと言ったのに……。
めちゃくちゃ嫌そうな顔をされてしまったよ。すごく納得がいかない。
「だから、話したくなかったんだ……」
オレがうんざりとした顔で告げる。
尋問はあっさりと終了してしまった。
情けないことに、オレたちの必死の抵抗はそう長くは続かなかったのである。
宰相サンの魔王よりも怖い表情にあっさり屈してしまったオレたち三人は、ペラペラと今日の出来事を語ることとなってしまった。
茶器の中の紅茶はほとんど減っておらず、なんと温かいままだ。
茶菓子のクッキーの中に自白剤でも入っていたのか、っていうくらい、もう、序盤からペラペラとしゃべらさせていただきました。
いや、ホント、無意味に抵抗した騎士団長サンに対して本気で怒った宰相サンの顔、笑ってるのにものすごく怖かったよ……。夢ででてきそうだ。怖い。
あの『不可思議怪奇奇譚』も霞むくらいな怖さだった……。
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