第40章−4 異世界の宰相サンは容赦なしです(4)

「これから騎士団長を尋問……いや、問い詰めるつもりだったが。これは、勇者様にも同席していただいた方がよいようですね」


(宰相サン、今、しれっと、尋問って言ってませんでした? オレも尋問するつもり? いや、つもりじゃなくて、してやる気満々な顔してますね)


「オレ……疲れてるんだけど? って言ったら、どうなるんだ?」

「ご不快な思いをする時間が、先に伸びるだけでございます」

「う…………ドリアは?」

「ご安心を。今夜は、勇者様におかれましては、ぐっすりとお休みいただけますことをわたくしが保証いたします。あの書類を片付けるには数日かかりますから」


(いや、それは誰でもわかることだから! あんな量の書類、あと数時間ちょっとで片付くなんてことないから! 絶対に無理だから! オレが言いたいのは、国王代理抜きで話していいのかってことだから!)


「王太子殿下が同席されない方が、まとまるお話もあるでしょう?」


 ……と、含みのあることを言われては、オレは断れない。


 たしかに、ドリアがいたら、話がややこしくなって、新たなトラブルが発生しそうだけどさ。


「勇者様、ご気分がすぐれないようでしたら、このままお部屋に戻ることもできますが?」


 オレを気遣うフレドリックくんの優しさが身に染みたけど、ラスボスの風格漂う宰相サンに逆らうのは、オレもフレドリックくんもよくない気がするよ。


「聖女様の説明によると、勇者様は至高神アナスティミア様とご面会をなされたとか?」

「ああ……」


(なんか、嫌な予感がする……)


 もうひとり、オレの世界の女神様も同席していたが、とりあえず沈黙だ。


 情報開示はじっくりと慎重に行わないとね。


「勇者様、国王陛下が執政に参加できない現在、女神様のご意思を知る『義務』がわたくしにはございます」

「……たいした話ではなかったけどな」


 うん、改めて思い出してみるが、たいした内容ではなかったよ。

 だって、オレの所有権をめぐって、女神姉妹の喧嘩に巻き込まれただけだったからなあ……。実りある、ありがたい会話とは到底思えないよ。


「たいした話なのか、そうではない話なのかは、わたくしが判断いたします」


 宰相サンは、ちょっとやそっとのことではあきらめてくれそうにもないみたい。


 あの書類の山をこの時点でドリアにつきつけたのも、王太子抜きでオレと話がしたいからかもしれないな。


(言いたくないこともあるが、伝えておいた方がいいコトもあるしな……)


 知られたくないコトの方がたくさんあるが、あまり出し渋って、実質的な王国の支配者である宰相サンに、変な誤解を与えるのもよくないよね。


 オレはそう判断すると、宰相サンとの面談を行うことにしたんだ。



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