第39章−3 異世界のハグは命がけです(3)
超加速の勢いがついたドリアを、インドア派なオレは受け止めきれない。
ドリアの渾身の体当たりに、オレはなすすべもなくふっとばされる……と覚悟したのだが、背中に柔らかな感触を感じただけで、オレは地面にひっくり返ることなく、ドリアに抱きしめられる。
(えっ…………)
背後で「くっ」とかいう小さなうめき声と、衝撃を散らす防御の魔法が発動されたのを確認する。
「マオ! マオ! マオ! 会いたかったぞ!」
驚くオレの耳元で、ドリアの「マオマオ」コールが煩い。
そんなに大きな声で叫ばなくても、しっかり聞こえているから、もう少し音量を下げてくれるかな。
オレはドリアにむぎゅっと抱きしめられて息が詰まりそうになる。
きゅん、とか、ドキン、で呼吸が止まる……ではない。
マジで、ギリギリと力いっぱい締めつけられて、息が止まりそうになる。
怖いことに全身の骨がギシギシ、メリメリと音をたてているよ。
オレが魔王だから辛うじて死にはしないが、間違いなく、人ならば死亡しても不思議ではないくらいの絞め技だ。
異世界のハグ怖いよ。
マジやばいから。
頼むから、みんな『加減』というものを意識するようにしてくれ。
あまりの苦しさに足がふらつき、倒れそうになるが、背後からオレをしっかりと支えてくれる者がいる。
そして、回復魔法。
至れり尽くせりの完璧サポートだ。
ふわり、とオレは甘い香りと心地よい暖かさに包まれ、一瞬、意識がとろんとしてしまう。
あ、ドリアの締め技で意識が飛びかけたのかもしれない。これは絶対、そっちの方だ。
「マオ! マオ! マオ! 心配したんだぞ! とっても、とっても、ものすごく心配したんだからな!」
「あ……ご、ごめんんっ……!」
話の途中でいきなり唇を奪われる。
ドリアは相変わらず、強引で、情熱的だ。
オレの気持ちや都合など全くおかまいなしだ。オレの全てを奪おうとする激しいキスにあっけなく翻弄されてしまう。
息苦しくて逃げようともがくが、背後でしっかりとオレを支えてくれている人の気配をまだ感じていたくて、オレの抵抗は中途半端になってしまう。
オレの抵抗ともよべない抵抗は、適度な刺激となって、ドリアを煽るという結果になってしまった。
ドリアの舌が執拗にオレを求めて絡んできて、それが甘美な疼きとなって、オレの全身を駆け巡る。
互いの唇が何度も何度も重なっては、角度を変え、音をたてて相手を貪る。
長い、長い、今までで一番、長かったのではないだろうか、というキスを終えると、オレは甘い息を吐きだしながら、背後にいるフレドリックくんの腕のなかに、ぐったりともたれかかった。
足腰に力が入らず、世界がぐるぐる回っている。
オレは支えを求めて反射的に逞しい腕にすがりついていた。
立つこともままならないオレを、フレドリックくんはオレの期待どおりに、しっかりと支えてくれる。
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