第37章−4 異世界の脳内会議はグダグダです(4)

 フレドリックくんの短い謝罪。


 なにに対して謝っているのかをわざとぼかしているのが、なんともやるせない。


「本当に、大丈夫だから!」


 オレは必死に否定するが、フレドリックくんは寂しそうに口元を緩めただけだった。


 ものすごく誤解させてしまったよ……。


(なにやってんだ――)


 口を開けば、開くほど、フレドリックくんが遠くの存在になっていくようだ。


 お互い無言で、それぞれ違う意味で、後悔のドツボに落ち込んでしまった。


 いや、実際、言葉のとおりオレは絶好調だよ。

 かつてないほどに絶好調なんだよ。


 魔素をゲンカイまでにぱつんぱつんに取り込んで、勇者対決直前にまで成長しきったときよりも、正体不明のナニかが体内に漲っている。


 今なら、小国なら一瞬で滅ぼせる隕石系の魔法を連続で五十発くらいは余裕で発動できそうだった。


 それくらい、元気だよ。


 心身ともに……と言い切れないのが残念だが、『心』は落ち込んでいても『身』の方はいたって元気だ。むしろ元気すぎる。


 神々の控えの間に喚ばれて目覚めた直後は、とてもじゃないが、疲労困憊して立っているのもしんどかったからね。


 禁書庫の禁書に魔力をごっそり奪われたときの感覚と似ているかな。

 いや、ほぼ同じ状態で、これは、回復するのに仮死状態になって、魔素と時間がそれなりに必要……っていう状態だった。


 だから簡単に、オレよりも華奢な聖女様に動きを封じられ、寝台に投げ飛ばされ、魅惑の魔法抵抗に失敗もした。


 アノ時なら、勇者じゃなくても、そこらの通りすがりの一般人であっても、オレを簡単にペチっと虫を踏み潰すくらいの感覚で討伐できただろう。

 それくらいオレは弱っており、無力だったよ。


 オレがこちらの世界では弱くなった……とか、回復に時間がかかる……とか感じるのは、魔素をオレの元いた世界から補充しているからかもしれないね。


 あちらの世界では同時回復、即時回復だったのが、こちらの世界の魔素はあるにはあるが、微々たるものだったので、必要量を確保することが難かしい。


 魔素が希薄だったから、オレは無意識のうちに元の世界から魔素を補充していたんだろうな。


 距離、次元、時間軸、そういった複数の障がいに妨げられて、補充スピードが落ちているからだ、と、オレは結論づけた。


 だったら、元の世界の補充ルートをしっかり繋いで、太いものにして、オレがガンガン魔素を消費したら、元の世界が魔素過多になることもない……ということか。


 その推理が当たっているのか、外れているのかは……あのポンコツ女神たちに確認するしかないだろう。


 まあ、無駄に危険を犯してまで接触して、あえて答え合わせをしたいとは思わないけどな。


 そして、よくわからんが、わかりたくもないが……。


――運命の番と魔王ちゃんが交わると、アタシの世界の魔素が、魔王ちゃんに使われるようになった……みたいなの――


 という女神の解説を全面的に信じるのなら、どうやら『運命の番』とその……大人な関係をがっつり愉しめば、『補充ルートがしっかり繋って、太いものになって』元の世界の魔素がガンガン消費されるというわけだ。



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