第37章−3 異世界の脳内会議はグダグダです(3)
コレはもう、因果としかいいようがないだろうね。
オレに対して真っ直ぐな好意を向けてくるドリアとの関係がぐだぐだなのも、堅物なフレドリックくんをますます堅物にさせてしまっているのも……オレに勇気がないからだ。
(だとしても……)
オレの眉尻が下がる。
(困った……)
会話がない。
フレドリックくんの反応がない。
呼吸しているのか、瞬きはちゃんとしているのか、こちらが心配になるくらい、フレドリックくんは微動だにしないよ。
オレの方から話しかけないことには、会話は発生しないだろうね。
この『ないない尽くし』の状態をなんとかしたい。しなければならない。
でも、機嫌の悪いフレドリックくんに話しかけるのがなんだか怖いよ。
フレドリックくんが怖いのではなくて、フレドリックくんに相手にされないのを、オレは恐れているんだ。
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フレドリックくんの機嫌が悪いのは、なにを隠そう、オレのせいなんだ。
すべてはオレのワガママに起因しているんだよ。
王城へと戻る道中、フレドリックくんは、オレの護衛騎士として、愛馬に乗って、馬車の外から警護をする予定だった。
だが、オレが強引に、フレドリックくんを馬車の中に呼び込んだ。
そこからフレドリックくんのご機嫌がナナメになってしまった。
いや、見た目は変わっていないよ。フレドリックくんはいつもの完璧な壁仕様だよ。頼りになる鉄壁な壁だよ。
馬車と並走している護衛はふたり。
御者もいれてやっと三人という状況に、フレドリックくんは我慢できないというわけだ。
頼みの綱の騎士団長サンからは、「まだ愚息の再教育中で手が離せないから、先に城へ戻るように」と伝言があった。
ふたりの護衛は、今年、騎士になったばかりの新人だそうで、それがさらにフレドリックくんの機嫌を悪くさせていた。
でもさあ……ここって、王都のど真ん中だよね。
オレたちは大通りを通って、最短ルートで王城に戻るんだよね。
その移動の間に、凶悪な賊が登場して、オレが襲われる可能性って……部屋でドリアに襲われる可能性よりも低いと思うんだけどなぁ。
そんなに、この国、この世界は、治安が悪いのか?
違うだろ?
「はあ――っ」
溜息が声と一緒にでてしまった。
フレドリックくんの肩がピクリと動き、オレは内心、ものすごく焦る。
「勇者様、どこかお体の具合がお悪いのですか?」
無理をさせすぎてしまったのではないでしょうか……。
という、副音声が聞こえたような気がした。
「あ、いや。そんなことはないよ」
と、即座に否定し、笑顔を浮かべようとしたのだが、失敗してしまった。
それを見たフレドリックくんの顔が、わかりやすいくらいに曇る。
「いやいや。大丈夫。心配しないで。むしろ、絶好調なくらいだよ!」
と、慌ててつけ加えるが、それがまた、妙にわざとらしくなって、オレが逆に体調が悪いのを無理して隠していると思われてしまいそうだった。
「申し訳ございません……」
いや、思われてしまった……。
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