第37章−2 異世界の脳内会議はグダグダです(2)
これをきっかけに、フレドリックくんといい関係になることを、オレはちょっぴり、いや、ぶっちゃけかなり期待していたと、改めて気づかされた。
『なにもかも、至高神アナスティミアの仕業』にできると、オレは勇気をだしてがんばって誘惑してみたけど、結局は空振りになってしまったようだね。
たいした恋愛経験も、遊戯にも詳しくないオレでは、フレドリックくんを満足させることはできなかった……と、ずずんと落ち込んでしまう。
歴代勇者の記憶も……勇者自体が彼女、彼氏いない歴イコール年齢な勇者が大多数を占めており、実技では全く役に立たなかったよ。
エイゾーだの、ニジゲンだの、ウスイホンだのビジュアルな知識はあったけどさ。
実体験はほぼゼロだったよ。
オレだけが気持ちよくなっていたんじゃないだろうか?
あまりにも気持ちよすぎて、途中で意識がぶっ飛んでしまって、最後はどうなったのか覚えていないのも、オレの気持ちを重たいものにしていた。
フレドリックくんはエリーさんといい関係で、オレはドリアのお気に入り。
ついでに補足するなら、オレは至高神アナスティミアとその聖女様にも気に入られてしまった。
しかも、別な意味でやばそうな『ハラミバラ』というありがたくもないスキルなのか、呪いなのかよくわからないモノが加わった。
身一つでこっちの世界に召喚されたときと比べると、オレの『手札』はそこそこ増えた。
が、所持している『札』が微妙すぎて、どの場面でどのように使うとよいのか、それこそ微妙すぎてよくわからないよ。
困ったものだ。
とりあえず、フレドリックくんに対して最大有効で、めちゃくちゃ強力な威力を発揮する『手札』は、今、ここで使うのはもったいなさすぎるかな。
迷走しつづけた脳内会議だが、それだけは、満場一致で即決されたよ。
なにしろここは、色恋に関しては豪放磊落な女神様が管轄し、多夫多妻が許されているトンデモ世界だ。
ピンクな禁書庫でもよくわかったのだが、過去、同性を伴侶として選んだ王様もそこそこいらしたので、まあ、そういう世界なんだろうね。
しかも、同性を伴侶とされた王様の恋愛事情は比較的落ち着いていらして、異性との人数が多い王様ほど、目を覆いたくなるようなドロドロというか、流血な記述がたくさん残っていたのが、なんとも怖い。
やっぱ、異世界って、すげ――怖いところだよな。
だから、オレとフレドリックくんがどうこうなったからって、即時、書庫にあったラブロマンスのような悲劇が起こることはないだろう。
うまく立ち回らないといけないだろうけどね。
う――ん。
禁書庫で読んだ歴代王様たちの桃色呟き日記がこんなマニュアル風に役に立つなんて、思ってもいなかったぞ。
異世界の王様すごいわ。
さすが、禁書庫だ。
本のレベルが違う。
それでも、政治的に微妙な立ち位置にいる王位継承権第二位の生真面目なフレドリックくんとしては、オレとの距離を適切に保ちたいんだろうね。
いとこでもあるドリアとの関係も、良好なままでいたいんだろう。
継承権を放棄したフレドリックくんのお父さん……騎士団長サンの立場ってものもあるだろうしね。
うん。元王太子で、未だに王位継承権上位のフレドリックくんが、王太子の想い人と関係し、深い仲になっちゃったら、色々と外野がうるさそうだよ。
しかもその相手が、聖女にもなれる資格持ちとなれば……。
それこそ、フレドリックくんが王太子位、王位を狙っていると囀るバカどもがわらわらとでてくるだろうね。
なかなかに手強いというか、頑なというか……。オレもたいがいだけど、オレ以上にフレドリックくんは堅物だよね。
そういうところがフレドリックくんであり、オレが惹かれたところも、そういうフレドリックくんだからこそ……なんだけどね。
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