第31章−1 異世界のオマケはてんこ盛りです(1)

「マオ――。早く行くぞ――」


 大噴水の屋台で大量に注文していた焼き菓子を受け取ると、ニコニコ顔のドリアがオレを呼んでいた。


 焼き菓子が入った大きな袋を、ドリアは大事そうに抱えている。


「すごいな。マオがとなりにいると、オマケが大量についてくる!」

「へ……へえ……」

「この焼き菓子なんか、倍増だぞ! 倍増!」


 ドリアはものすごく興奮している。

 なんとなく、そんな気がしていたんだが、気のせいではなかったんだな、とオレは思う。


(異世界のオマケすごすぎるな……)


 大興奮のドリアをどう扱ってよいのかわからず、オレはなるべく刺激しないように、ドリアにくっついて、馬車止めをめざして歩いていく。


 ドリアは焼き菓子を片手に抱え、もう一方の手で、オレの手を握っている。


 大きな荷物に、とてもうれしそうな表情を浮かべているよ。


(そんなにこの焼き菓子が好きなのか……)


 どんな味なのか……少し、興味はあったが、オレの胃袋はもう食べ物を受け付けようとはしていない。


 残念ながら、それは次の機会になりそうだね。


 ……本当に、次の機会ってあるのだろうか。


 オレの疑問は心の奥底にしまい込み、一同は、再び馬車に乗り込んだのであった。


 ****


 大通りを出た馬車は、いくつかの角を曲がって、狭い道へと進んでいく。


 そして、到着したのは、素朴なつくりの、大きな建物の前。


 馬車の扉が大きく開き、オレたちはそこから見える景色に首をかしげる。


 建物の前は広い庭……というか、広場になっており、数十名の子どもたちが遊んでいる。


 学校かなにかだろうか?


「すぐに終わらせるから、マオたちは外で待っていてくれてもいいぞ」


 ドリアはそういうが、実際はそういうわけにもいかず、フレドリックくん、エリーさん、ドリア……最後にオレという順番で、馬車を降りる。


 人の出入りは制限されているようで、敷地を囲う塀は高く、門はぴったりと閉じられ鍵がかかっている。


 門の前に突然止まった馬車に驚いていた子どもたちだが、ドリアの姿を見たとたん「わっ」という歓声が沸きおこる。


「おにーちゃんだ!

「おにーちゃんが、きた――!」

「誰か、院長先生を呼んでこい!」

「おにーちゃん、会いたかったよ!」


 子どもたちが一斉に、門の方へと走り寄ってくる。

 小さな子どもは足がもつれたのか、転んで大泣きしている。

 急に騒がしくなった。


「みんな――! 久しぶりだな――! 元気にしてたか?」



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