第31章−2 異世界のオマケはてんこ盛りです(2)

 大きな門は閉じられたままだったが、遊んでいたなかで最年長らしき少年が、隣にある通用門の入り口を開けた。


「すぐに終わるから」


 いつもよりも三割増しなドリアの笑顔にオレは驚く。


 焼き菓子の入った大きな袋を抱えながら、ドリアは子どもが開けた通用門をくぐり、慣れた様子で中へと入っていった。

 振り向きもしない……。


「神殿施設と聞いていたが……」

「神殿施設には間違いありません」


 エリーさんとフレドリックくんの顔に、苦々しい表情が浮かんだ。その言い方が、妙にひっかかる。


 通用門を開けた少年から、オレたちに「あなたたちはどうするんですか?」という視線を向けられる。


「マオ様……お目汚しかもしれませんが、ドリア様をおひとりにさせるわけには……」


 エリーさんの言葉に、少年の顔がひきつった。


 この場所に足を踏み入れたくないのだが、ドリアをひとりにさせるわけにもいかない、門の前で立ち尽くすことも許されない……という、エリーさんの葛藤が伝わってくる。


 この学校のような……寄宿舎のような場所は……おそらく、孤児院だろう。

 ふたりが「神殿施設」と言っていたから、神殿が管轄している施設なのか。


「……部下の再教育からだね」


 オレの冷ややかな言葉に、エリーさんとフレドリックくんは深々と頭を下げる。


「まずは、部下の適性を見極めて。武力だけが能力の全てじゃないよ。適材適所。得意不得意。次は、しっかりと下調べをするんだよ」

「マオ様……この度は申し訳ございませんでした。ご指摘、肝に命じておきます」


 エリーさんとフレドリックくんのお辞儀の角度がさらに深くなっちゃった。


「この道幅なら、しばらくの間であれば、馬車を停めさせてもらっても迷惑がかからないだろう」

「はい」


 腰を折ったまま、エリーさんが答え、フレドリックくんが御者に短く指示をだす。

 馬車が動き、正門から少し移動したところで、ぴたりと止まった。


 通用門を開けた少年は、目をパチクリさせながらオレたちの様子を眺めている。


 オレはゆっくりと、少年の目線まで身をかがめた。


 民に話しかけるように、なるべく、にこやかに、可能な限りおだやかな表情をつくってみる。

 ドリアのようなキラキラした笑顔はオレには無理だ。どちらかというと、威圧の方が得意なのだが、できるだけ、笑顔を浮かべるようにがんばってみる。


 少年の目元が潤み、顔がみるまに赤くなっていくよ。


「さて、失礼な大人は、わたしが懲らしめておいたから、安心してくれていいよ。彼女たちもすごく反省している。許してくれるかな?」


 オレの言葉に、少年はコクコクと、大きくうなずいてくれた。


「わたしが約束するよ。きみや、ここにいるきみの大切なひとたちを傷つけるような行いは決してしないし、させない。だから、わたしたちを中に入れてくれるかな?」




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