第28章−3 異世界の庭師は◯◯◯です(3)

 太陽がさんさんと輝くなか、三十名程の集団が、一気に消えた。


 なのに、オレ以外は誰も驚いていない。


 というか、子どもたちは庭師たちが消えたことに大喜びだ。手を叩いて、はしゃぎまくっている。


 ……これは、植物園のパフォーマンスか、なにかだろうか?


「ちょ、ドリア……庭師さんたちが消えた? 消えたよな?」

「安心しろ、マオ。庭師たちは、消えてはいない。見えない場所に移動しただけだ。ちゃんと、側にいてマオのことを護ってくれているからな。心配しなくていいからな」


 オレを抱き寄せ、心配するなと背中を軽く叩かれる。


 いや、心配ではなく、オレは驚いているのだが……。 

 どうしてオレが驚いているのか、ドリアにはわからないようである。


 それとも、異世界の王城に仕えた庭師はデフォルトで、姿を消すことができるというのだろうか。


 まあ、裏方の仕事だからな。高貴な方々と遭遇したら、姿を隠さねばならなかったのだろう。

 きっと、それが身についてしまい、退職後もついついやってしまう……ということか。


 そう考えることで、オレは自分を無理やり納得させた。


 ****


 植物園内をちょこまかと走り回る子どもたちを避けながら、ドリアの先導のもと、オレたちは植物園内を順路どおりに見学していく。


 植物園はいくつかのエリアに分かれており、それぞれ、立派な巨大温室があった。


 温暖な地方に自生する植物。

 高い山に自生する珍しい植物。

 寒冷な場所でも育つ植物。

 雨が少なく、高温な環境で育っている植物。

 逆に、雨が多く、湿度も温度も高い地域にある植物。

 薬草園もあり、興味は尽きない。


 それぞれのエリアをぐるりと見て回る。

 植物図鑑で予め知っていたが、この世界の植物の多さに、オレはただ驚くばかりであった。


 たくさんの植物があった。

 綺麗だったり、奇妙だったりする植物に混じって、花が咲き終わった後の実が食べれるもの、根が調理可能なもの、葉が食用であったりと……オレの興味の対象はどうしてもそちらの方へと向かってしまう。


 こんなにたくさんの食用植物があれば、食卓も豊かなことだろう。

 腹が満たされれば、心も満たされる……とオレは思っている。

 胃袋は大事だ。

 

 光があふれる異世界では、こんなにたくさんの植物が元気に育つのか、とオレは感動すると同時に、羨ましくも思った。


 興味深げに植物を眺めるオレを、ドリアは終始、ごきげんな笑みを浮かべて見つめている。


 そんなにジロジロ見られていては、恥ずかしい。



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