第28章−3 異世界の庭師は◯◯◯です(3)
太陽がさんさんと輝くなか、三十名程の集団が、一気に消えた。
なのに、オレ以外は誰も驚いていない。
というか、子どもたちは庭師たちが消えたことに大喜びだ。手を叩いて、はしゃぎまくっている。
……これは、植物園のパフォーマンスか、なにかだろうか?
「ちょ、ドリア……庭師さんたちが消えた? 消えたよな?」
「安心しろ、マオ。庭師たちは、消えてはいない。見えない場所に移動しただけだ。ちゃんと、側にいてマオのことを護ってくれているからな。心配しなくていいからな」
オレを抱き寄せ、心配するなと背中を軽く叩かれる。
いや、心配ではなく、オレは驚いているのだが……。
どうしてオレが驚いているのか、ドリアにはわからないようである。
それとも、異世界の王城に仕えた庭師はデフォルトで、姿を消すことができるというのだろうか。
まあ、裏方の仕事だからな。高貴な方々と遭遇したら、姿を隠さねばならなかったのだろう。
きっと、それが身についてしまい、退職後もついついやってしまう……ということか。
そう考えることで、オレは自分を無理やり納得させた。
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植物園内をちょこまかと走り回る子どもたちを避けながら、ドリアの先導のもと、オレたちは植物園内を順路どおりに見学していく。
植物園はいくつかのエリアに分かれており、それぞれ、立派な巨大温室があった。
温暖な地方に自生する植物。
高い山に自生する珍しい植物。
寒冷な場所でも育つ植物。
雨が少なく、高温な環境で育っている植物。
逆に、雨が多く、湿度も温度も高い地域にある植物。
薬草園もあり、興味は尽きない。
それぞれのエリアをぐるりと見て回る。
植物図鑑で予め知っていたが、この世界の植物の多さに、オレはただ驚くばかりであった。
たくさんの植物があった。
綺麗だったり、奇妙だったりする植物に混じって、花が咲き終わった後の実が食べれるもの、根が調理可能なもの、葉が食用であったりと……オレの興味の対象はどうしてもそちらの方へと向かってしまう。
こんなにたくさんの食用植物があれば、食卓も豊かなことだろう。
腹が満たされれば、心も満たされる……とオレは思っている。
胃袋は大事だ。
光があふれる異世界では、こんなにたくさんの植物が元気に育つのか、とオレは感動すると同時に、羨ましくも思った。
興味深げに植物を眺めるオレを、ドリアは終始、ごきげんな笑みを浮かべて見つめている。
そんなにジロジロ見られていては、恥ずかしい。
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