第28章−2 異世界の庭師は◯◯◯です(2)
庭仕事って、そこそこ体力を使うのだろう。肉食花を育てているだけあって、初老といいながら、みな引き締まった体躯をしており、漂っている気配が恐ろしいほどに物騒だ。
そう、めちゃくちゃ物騒な集団だ!
植物の世話をしていました、っていうよりも、さっき、さくっと人を始末してきましたっていうような顔つきなヒトが圧倒的に多い。
いや、はっきりいわせてもらえば、そういうヒトしかいない……。
異世界の庭師って、強面で怖い。
そうでないと、あの肉食花の世話は難しいのだろうね……。
恐るべし肉食花だ。
「今日はお忍びデートだからな! 余計なことはするなよ!」
「はっ。心得ております」
園長さんの返事はとてもよい。
まあ、返事がよいイコール、王太子の命令をきくとはかぎらないがな。
「マオ様、この時期、校外学習のシーズンとなっております。また、国葬期間中は、植物園は閉園となっておりましたので、久しぶりの開園に、団体入場者が多くなっております。少々騒がしいかと思いますが、我が国自慢の植物園を楽しんでくださいませ」
「あ、ありがとう……」
なるほど、校外学習か……。
っていうか、ここにも国葬の影響がでていたとは……。ちょっと驚いた。
さきほどから子どもが集まってくるな……と思っていたのだが、そういうことなのか。
遠巻きにしながら、オレたちの方をじっと見ている子どもたちの視線が痛い。しかも、数が多い。
国葬がひと月も続いたから、学校スケジュールも大変だろう。
あのときは仕方がなかったとはいえ、国葬延長となる原因を作ってしまったオレとしては、心苦しかった。
この秘密は墓場まで持っていくしかない。
子どもたちにガンを飛ばして、怯えさせまくっているエリーさんとフレドリックくんがなんか、大人げない痛い存在にみえる。
子どもたちの目には、オレたちはどんな風に映っているのだろうか。
おそらく、意味不明な異分子、奇妙な集団に見えているのだろうね。
辛い。
子どもたちの食い入るような視線がなんとも辛い……。
「我らは、マオ様の植物園デートを邪魔せぬよう、陰から全力でお護りいたしますので、ご安心ください」
「へ?」
(植物園デート?)
言葉の意味を問い直そうとしたとき、一陣の風が舞い、いきなりオレの目の前から庭師さんたちが消えた。
うん、文字通り消えた。
……跡形もなく、ごっそり消えちゃった。
魔法とかそいういう気配は全くなかったのだが、執事風の園長さんをはじめとする、庭師のみなさん、全員が、ひとり残らず消えてしまったのである。
「えええええっ!」
が、驚いているのはオレだけだった。
ドリアもエリーさんもフレドリックくんも、変装した近衛騎士のひとたちはもちろん、信じられないことに、集まっていたちびっ子たちも平然としているんだな。
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