第28章−1 異世界の庭師は◯◯◯です(1)

「えっと……こちらの方々は?」


 このまま傍観していたら、変な勘違いをされて、変な方向に話がいってしまいそうなので、オレは強引に会話に割り込んでいく。


 オレはフレドリックくんが貸してくれた本で『先手必勝』ということを学んだのだよ。


「マオ、この者たちが、さきほど話していた……王城に仕えていた元庭師たちだ」

「あ……ああ?」


 語尾が微妙に疑問形になってしまうのは仕方がないだろうね……。


 偏見かもしれないが、植物を愛でる庭師には相応しくない、凶悪な雰囲気がそこかしこに漂っているんだ。

 なんか、空気がおかしい。

 このひとたちが、可憐な植物の世話をし、綺麗な花を咲かせているなど……すぐには想像できないよ。


「紹介しよう。彼が前任の庭師団長だ。今は、この植物園の園長だ」


 そう言いながらドリアは、一同の中で一歩進み出ている執事風の老人を指し示す。


 うん……紹介されなくとも、なんとなく、彼が一番偉いヒトだということはわかっていたよ。

 見た目は穏やかな初老の男性……なんだけど、それはあくまでも見た目だけだね。


 うん……。


 一番、偉くて、なんだか、とっても強そうだ……。

 下手したら、この中で一番……エリーさんよりも強そうだよ?


 なぜなんだ?


 この世界、強いヒトがゴロゴロいるけど、それなのにどうして、魔王を倒す勇者を召喚したんだ?


 みんなでがんばれば、魔王のひとりやふたり、問題なく倒せるんじゃないかな……?


「えっと……庭師? って、植物園の植物の世話をしている?」

「左様でございます」


 執事風ではなく、執事そのもの、といった折り目正しい園長の対応に、オレはとまどいながらも頷く。


 庭師団長……以外の庭師たちが無言で頭を垂れる。

 その乱れぬ反応は、近衛騎士とほぼかわりない。

 姿勢も正しく、手先、足の角度まできちんと揃っている。

 訓練されている立ち居振る舞いに、オレは圧倒されてしまう。


(こ、これって、なんの集団なんだ?)


 いや、引退した庭師の集団なんだろうけど……。


 引退したというだけあって、オレたちを出迎えた庭師たちの年齢は高めだ。


 白髪のおじいちゃん集団である。

 おじいちゃんではあったが、みんな眼光鋭く、かくしゃくとしており、腰が曲がっている……ようなひとは、ひとりもいないよ。


 姿勢がとてもよく、仕草に隙がないね。

 庭仕事を行っているというだけあって、彼らはお揃いのツナギを着ているのが……率直に言わせてもらえば、とても似合っておらず、アンバランスなことこのうえない。


 王太子殿下が来るということで、みな真新しいツナギを着て出迎えたのだろうけど……。


 きっちりとプレスされたおろしたてのツナギだよ。

 作業用のツナギなのに、このおじいちゃん集団が身につけていると、作業着というよりは、物騒な戦闘服に見えてしまうから不思議だねぇ。



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