第27章−6 異世界の植物園は敷居が高いです(6)
騎士団長は継承権を放棄したけど、この国では、その子には、本人が放棄しない限り継承権があるようだ。
順位を決める詳細ルールに興味はないけど、フレドリックくんはお母さんの身分も影響して、他の兄弟をさしおいて、現在、継承権第二位だそうだ。
ドリアが国王になれば、ドリアに世継ぎが産まれるまでは、ふたたび王太子として継承権第一位になるらしいよ。
伴侶や子を持たず、ひたすら復活を繰り返して魔王に返り咲いているオレには、馴染みのない考え方だ。
すごく複雑そうだ。興味もないし、オレには無理だな、と思ったよ。
継承権第一位だった時期もあることから、王太子教育をフレドリックくんもみっちりと受けているらしい。だから、あれほど優秀なんだね。
そして、継承権第二位としての立ち位置の教育も受けているんだろうな……。
以前、フレドリックくんが自分はすごくモテるとか言っていたことがあるが、そういう背景があれば、野心家な親やそのお嬢様たちに狙われているに違いないよ。
対人関係が希薄なオレでも、それくらいはわかるからね。
この世界の書庫でそういう設定の大衆小説をたくさん読んだからね。
しかし、あんなに優秀な王位継承権を持ついとこがいれば、ドリア側の立場になったら、なにかとひねくれてしまうだろう。
書庫には、そういう設定の小説がたくさんあったよ。
だが、ひねくれもせず、自暴自棄にもならずに、真っすぐな心根のまま育ったドリア王太子も、ある意味すごいのではないだろうか。
植物園に入る道の他に、左右にもレンガ敷きの道があり、道沿いには花壇が続いている。
「左右の道を行けば、その先には植物公園があって、この時期に咲く花がみられるのだが、今日は、こっちだ」
そう言うと、ドリアはオレの手を引いて、迷うことなく入場門をくぐる。
入場料は……フレドリックくんが入場門脇にある小屋でなにやら話し込んでいる。
継承権第二位は実に働き者である。
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「いらっしゃいませ」
植物園に入ると、大勢の声がオレたちを出迎えた。不意打ちだったので、とても驚いた。
「ようこそ、おいでくださいました」
「今日は出迎えは不要だと言ったのに……」
ドリアは困ったような表情を浮かべながら、一列に並び、深々と礼をしている初老の一団を眺める。
「そういうわけにもまいりません」
出迎えのひとりが、集団の中から一歩、前進して答える。
服装からして、この施設の代表なのだろう。他の者は作業着なのだが、このヒトだけは、執事のようなかっちりとした服装をしている。
「お前たちの魂胆はミエミエだぞ。わたしの想い人がどんな人物なのか、見たかったのだろう!」
「そのようなことは……」
白い顎髭をしごきながら、もごもごと口ごもっていることは、そういうことなのだろうね。
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