第27章−5 異世界の植物園は敷居が高いです(5)

 立派な入口の脇には、見事な凛々しい男性の銅像がたっていた。

 台座にしつらえてあるプレートを読んでみると、この植物園を創設した王家の方の像だということがわかる。


 ドリアのご先祖……ひいおじい様のおじい様だそうだ。


 血族ということで、眼差しがとことなくドリアに似ている……というか、騎士団長さんにそっくりなんだが?


 騎士団長さんに髭はなかったけど、髭があれば、銅像のモデルですか? というくらいそっくりだよ。


 オレが銅像に驚いていると、ドリアがさらっと説明してくれた。


「似ているに決まっている。騎士団長は、父の異母兄だ。母親の身分が低かったことや、筆頭公爵家を存続させる必要があったので、やむなく臣籍に下ったが、騎士団長は、ひいおじい様のおじい様だけでなく、父上にも似ているぞ」


 髪と瞳の色は違うけどな……と、ドリアはつけくわえる。


「えええ?」

「騎士団長のフレディア・ラーカスは、わたしの伯父だ」


(なんだって!)


 誰も教えてくれなかったよ。

 いや、知っていて得するような知識でもないか。


 驚いているオレを、ドリアは不思議そうに眺めている。

 伯父とはいっても、臣籍に下ったというから、主君と臣下の関係なのだろうね。

 実にあっさりとしている。


 両親も知らない。兄弟や縁戚がいないオレとしては、王家の異母兄弟はとても不思議な感覚だ。

 『昼の世界』では、そういう両者の関係がこじれて、争いに発展するというケースが頻繁に起こっている。


 オレの認識では、王家の血族は同族で争うことが好き。仲が悪いと、インプットされているくらいだからね。


 こちらの世界はどうなのだろうか……。


 視線は自然とフレドリックくんの方へと向く。

 この会話はフレドリックくんにも聞こえているだろうが、彼の顔に変化はない。

 みんなが知っていて当然のことなのだろうね。


「フレドリックとわたしは、いとこ同士になるのだが……」


 伯父との関係もああいう感じなのだから、フレドリックくんは完璧に臣下扱いなのだろうね。


「フレドリックの母親は王族だ。王家の者が降嫁して、騎士団長の二番目の妻になったんだ。わたしが誕生するまでは、フレドリックが継承権第一位だったんだぞ。その縁で一緒に教育を受けて、兄弟同然に育った」

「…………」


 まあ、どうでもいい情報だったんだけど、驚くには十分すぎる情報である。


 騎士団長やフレドリックくんがたまに、びっくりするくらい、王太子を遠慮なく雑に扱うときがあったけど、そういう背景があったからか……と、妙に納得してしまう。


 甥っ子の教育ともなれば、厳しくもなるだろうね。

 伯父が厳しくしなければ、誰が王太子を厳しく養育できるというのだろうか。


 ふたりの制止がなければ、王太子はもっと暴走し、もっと残念な子になっていたにちがいないよ。




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