第27章−4 異世界の植物園は敷居が高いです(4)

 まずは、色とりどりのバラが咲き誇る長い、長いトンネルを抜ける。


 柔らかな日差しに、バラの花びらが宝石のような輝きを放ち、来訪者を歓迎する。 世界は来訪者の心を和ませる、豊かな香りにあふれていた。


 それだけでもオレのテンションはあがりまくる。


 『目を輝かせてバラを眺めるオレ』を眺めるドリアもごきげんだよ。


 植物図鑑を熟読したオレが、次々とバラの品種を言い当てるので、ドリアは目をまんまるにして驚いていた。


 驚くべきところは、オレの記憶力よりも、この国の植物画のレベルの高さだろうね。

 この国の植物画家はとても優秀だ。植物図鑑は芸術品、画集とも呼べるくらいの、クオリティの高さだった。植物の特徴をよくとらえて、とてもわかりやすいね。この国の学術水準の高さに、オレは感心してばかりだよ。


 オレとドリア、エリーさんとフレドリックくんという、二組のカップルから少しばかり離れた後ろを、ぞろぞろと、旅人やら冒険者やらがついてくる。

 なんとも奇妙な一団に見えただろう。


 途中、バラを愛でながらおしゃべりに興じている何組かの貴婦人を追い抜いた。


 全員がオレたちに気づくと、手にしていた扇を慌てて広げて口元を隠している。

 顔のほとんどは扇で隠れてしまい、大きく見開かれた目だけが覗いていた。


 ご婦人たちは硬直したまま、不思議そうにオレたちの方を凝視している。

 植物園には相応しくない集団として目に映ったんだろうな……。

 少し、恥ずかしいよ。


 長いバラのトンネルが途切れると、ようやく、植物園の入場ゲートが出現する。


 でかでかと王立植物園と書かれた看板が印象的だね。


 植物がシンボライズされた巨大な門扉が、大きく開いており、入場者を受け入れている。

 外壁は植物をモチーフとした鉄柵が囲いとなっており、鉄柵にからまっている蔓薔薇が可憐な小花をつけている。


 この入場門から先に進みたかったら、入場料を払わないといけないらしいよ。


 植物園の維持管理は、国の予算からでており、入場料は、植物の研究をしている学者を支援するために使われるそうだ。


 フレドリックくんの説明に、オレが「へぇ~」と感心していると、ドリアもオレの隣で「そうだったんだ。入場料はそんなことに使われていたんだな」と驚いている。


 ドリア、これって、王太子の基礎知識じゃないか?


 エリーさんとフレドリックくんの落胆ぶりを見ていると、オレの直感は間違っていないだろうね。



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