第25章−6 異世界のポニーテールは最凶です(6)

「そうです。ダブルデートです。二組のカップルが一緒にデートをする、アツアツなイベントです」

「おおおっ!」


 ぶすっとしていたドリアの表情が、みるみるうちにキラキラしたものに変わる。


 ……すごくわかりやすい反応だな。


 ダブルデートという謎な言葉の響きに、ドリアはすっかり心を奪われてしまったようである。


 いいのかそれで?


「マオ。今日は、お忍びダブルデートだな」


 ……本人はすごく嬉しそうだから、それでいいんだろう。


 なにも言うまい、とオレは心に決めた。


 オレの隣りでエリーさんがニヤリと、なんとも意地の悪い笑みを浮かべたのは、幻覚だろう。


 発想は悪くないよね。

 たったふたりでも、すぐ側に護衛がいるのといないのでは、護る側からしたら、大違いだからな。

 

 そのすぐ側にいる護衛が、エリーさんとフレドリックくんペアなら、最凶……いや、最強だろう。


「ああ。もう、ダブルでもトリプルでも、なんでもしてくれ。とりあえず、大神殿に行ければそれでいい」

「わかっている。マオが希望している大神殿は、忘れずにデートコースに組み込んでいるから、安心してくれ」


 ドリアの「安心してくれ」ほど、不安しかないのだが……。

 出発する前から、オレは疲れてしまった。


 もともと、インドア派だから、運動も外出も苦手だからね。


「勇者様、タイムスケジュールは、わたしがしっかりと管理しますので、ご安心ください」


 エリーさんがにっこりと、貴族令嬢の微笑みを浮かべる。


 いやいや、出立が遅れたのは、エリーさんの長い、長い、説教のせいだからな。


 このヒトに時間管理を任せて本当に大丈夫なのか?


 ダブルデートの片方のカップルが男同士だとか、下手したら、令嬢が三人の男を引きつれているように見えるんじゃないだろうか……といった疑問は、心の隅に追いやろう。


 とりあえず、このポニーテールの女傑には逆らわない方がいい、ということはわかったよ。


 ただ、平穏無事にオレは大神殿に到着することができるのだろうか。


 心配なことがたくさんありすぎて困る。


 ****


 そういうやりとりがなされている間に、準備が整ったようで、馬車がゆっくりと動き始めた。


 かっぽ、かっぽ、とのんびりした馬の蹄の音が聞こえてくる。


 馬車の揺れは少なく、座り心地もよい。


 魔術的な仕掛けなのか、それとも構造上の仕組みなのか、ちょっと気になるな。


 すでに、平穏無事なスタートは言い難いお忍びダブルデートは、こうして始まったのである。



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お読みいただきありがとうございます。

新しいキャラもでてきました。

このメンバーでのダブルデートって!?

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