第25章−5 異世界のポニーテールは最凶です(5)
「隊長! 申し訳ございません」
様々な恰好をした近衛騎士たちが、一斉に頭を下げる。
訓練と躾が行き届いているようで、謝罪するタイミング、腰を折る角度はみな綺麗に揃っている。さすがは近衛騎士だ。
エリーさんってば、近衛騎士の隊長だったんだね。だから、あんなに強いし、ためらいもなく、王太子殿下を放り投げることができたんだ……。
ドリア王太子が「時間がもったいない」といって、全力ダッシュをした結果、この場にいる全員がエリーさんに怒られまくって、出発時間が大幅に遅れてしまった。
うん、時間を無駄に消費してしまったな……。
「それでは、勇者様、王太子殿下、本日の『お忍びデート』とやらをはじめましょうか」
エリーさんが合図を送ると、オレたちの目の前に、お忍び用の地味なつくりの馬車がカラカラと音をたてながらやってくる。
御者だけでなく、従僕つきだ。
見た目は地味だが、色々な強化魔法が施されており、ちょっとやそっとの襲撃ではびくともしないくらい、頑丈そうだ。
馬具にもなにやら魔法の気配がするね。
王族が使用する馬車って、こんなにガチガチに防御力をあげないといけない世界なんだ……。
異世界、やっぱり怖い……。
馬車の扉が開き、オレはドリアのエスコートで馬車の中に入った。
そして、王太子、エリーさん、フレドリックくんが続いて入ってくる。
お忍び用とはいえ、流石、王族が使用する馬車である。
四人が乗り込んでも広々としていた。
ん?
四人?
「どうして、エリーとフレドリックもいるのだ!」
ドリアがふたりを指さして怒っている。
どうせ、馬車の中でふたりっきりになったら、ここぞとばかりにイチャイチャするつもりだったのだろう。
オレもそうなるものだと、少し、覚悟を決めていたのだが、エリーさんとフレドリックくんが同席していたら、そういうイベントは起こらないだろう。
しかも、オレの隣にはエリーさん、向かいにはフレドリックくんが座り、ドリアはオレの斜め向かいの席。
ドリアの苛立ちと戸惑いは、なんとなくわかるね。
国葬をがんばったで賞のご褒美というわりには、ドリアはかなりしょっぱい扱われ方をしているぞ。
「王太子殿下、今日は、下級貴族のダブルデートという設定です」
エリーさんが真剣な顔で説明する。
「だ、だぶるでーと?」
ドリアが不思議そうに首を傾げる。
***********
お読みいただきありがとうございます。
フォローや励ましのコメント、お星様など、お気軽にいただけますと幸いです。
***********
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます