第25章−4 異世界のポニーテールは最凶です(4)
「王太子殿下、謝罪の言葉は、ちゃんと、相手の顔を、目をみて言うからこそ、謝罪になります」
そ、そうだよな。
エリーさんの言うとおりだった。
もう、しょぼくれたドリアを見てたら、ウッカリ許してしまいそうになったじゃないか。
「マオ。わたしが悪かった。嬉しくて、無茶をしすぎた。許してくれ……」
オレに向かって、素直に頭を下げる王太子を、エリーさんは満足そうな目で眺めている。
そして、ドリアがオレの手をとろうと手を伸ばしかけたところを、エリーさんが、パシーンっと、平手ではたき落とした。
「な、なにを!」
びっくり顔のドリア王太子が、エリーさんを見つめる。
いや、これにはオレも驚いた。
めちゃくちゃいい音がしたからね。
彼女はドリア王太子とオレの間に、強引に割って入る。
赤い跡が残ったオレの手を、彼女はもう一度すくいあげると、呪文を唱えて回復魔法をかける。
手首から痛みがなくなり、赤みがみるみるうちに引いていく。
この程度のコトに、魔法の無駄遣いを……。
と思ったのが、顔にでてしまったみたいだ。
エリーさんはにっこりと、オレに笑顔を向けた。なんか、ちょっぴりすごみがあって怖い。
「勇者様、さしでがましいこととは存じますが……あなた様は、もう少し、ご自身のお体を大事になさった方が、よろしいかと思います」
「え……?」
「こんな、ヘタレ男のしょんぼり顔にほだされて、無体を許していては駄目ですよ!」
「は……はあ……」
エリーさんも王太子に対して容赦がない。
近衛騎士たちって、みんなこうなのだろうか……。
側にいる栗色の髪のフレドリックくんに視線を向けるが、オレの護衛騎士は、無表情のまま見事に空気に溶け込んでいた。
今日は一段と空気感がすごい。
う――ん。
また、なんか個性が強そうなヒトがでてきたねぇ……。
オレの周囲は、こういうヒトたちばかりなのか、異世界がこういうヒトたちばかりなのか……謎だ。
エリーさんがオレに回復魔法を唱えたり、王太子にくどくどと説教をしているうちに、お忍びデートの護衛担当の近衛騎士たちが、ようやくなんとか到着する。
みんな、ぜーはー、ぜーはーと呼吸が乱れていれば、エリーさんの雷が近衛騎士たちの上に落ちた。
「お前たち、それでも、栄えある近衛騎士の一員か! 鍛錬が足りん! 気合が足りん! そのような無様な姿で、どのようにして勇者様をお守りいたすつもりなのか!」
(いや、守るのは、オレじゃなくて、王太子殿下の方だろ……)
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