第25章−2 異世界のポニーテールは最凶です(2)

 ドリアはハイスピード、ハイテンションのまま、城の東門の方へと向かっていく。


 外にでる扉を蹴破り……文字通り、蹴破り、オレたちは馬車止めのエリアを通り過ぎる。

 ……ぶっ飛んだあの重々しい扉は、誰が回収するのだろうか……。


 っていうか、あっちに、馬車が止まっているんだが、アレに乗るんじゃないのか?


 ドリア、どこに行くんだ!


 このまま城門まで突っ走って、城門を蹴破るんじゃなかろうか、とオレは心配になった。


 今のハイテンションのドリアなら、なんでもできてしまいそうだ。


 と、突然、爆進していたオレたちの目の前に、人影がたちはだかる。


 ぶつかる、と思った瞬間、その人物は、王太子の胸ぐらを掴むと、空に向かって高々と放り投げた。


 ……そう、高々と、王太子を放り投げたのである。


 魔法的力ではなく、腕力で、青空を飛んだのは初めての経験だった。


 ドリア王太子の意味不明な叫び声が聞こえた。


 ……オレも、巻き添えをくらって、軽々と宙を舞う。


 ぐるりと景色が反転し、青い空が見えた。


(……ああ、なんて、きれいな空なんだろう)


 今日はまさしく外出日和だった。


 で、なんで、オレも空中に放り投げられないといけないのか……。


 ドリアがしっかりと、オレの手を握って離さないからだよ。


 意図せず、ふたりで仲良く宙を舞っているんだよ。


 勢いよく飛んだあとは、勢いよく落下するだけだね。


 オレたちはふたり仲良く落下して、地面に激突する……ところで、重力魔法が発動し、落下速度に変化が生じた。


 ああ、これは、フレドリックくんの魔力だ……。


 熱く、強く、安定感のある魔力だ。


 重力魔法のおかげで、オレたちは体勢を立て直しながら、ゆっくりと地面に降り立つことができた。


 フレドリックくん、ナイスアシストだ。


「勇者様、ご無事でしたか?」

「ああ……なんとか」


 オレたちと同じような外出着姿のフレドリックくんが、心配そうな目を向ける。


 ちなみにフレドリックくんの髪は栗色で、目は茶色だった。


 赤毛は珍しくもないだろうが、フレドリックくんの髪は、鮮やかな赤なので、城下では目立つのかもしれない。


「勇者様、お怪我はございませんか?」

「ああ……大丈夫だ」


 怪我はしてないぞ。


 準備運動もなしに、部屋からここまで全力疾走したから、脇腹が痛いし、呼吸も苦しいけどな!


「王太子殿下! なにをなさっておいでですかっ!」



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