第24章−5 異世界の軟禁は甘々です(5)

 オレの女性体のときの破壊力抜群な美貌は、嘘でも誇張でもないよ。マジな話だからね。


 そうそう、男性勇者が召喚されたとき、うっかり、女性体で対峙したことがある。


 そのときは、大変だったよ。


 そのときの勇者も勇者で問題があったけどね……。


 なんと、問題の勇者は、チョロイン全員に「ボクが愛を捧げる麗しの女神はキミだけだ」とかなんとか適当なことをそれぞれに囁いて、コッソリ五股してたんだ。


 五股だぞ。


 しかも、内緒でだぞ。


 さらに、あのク……いや、恋多き勇者は、なにを血迷ったのか、女性体のオレにまで惚れてしまったんだ。


 最終決戦を前にして、五股勇者はいきなりオレを口説き始めたんだよ。


 しかも、口説き文句が「ボクが真の愛を捧げる麗しの女神は、ようやく巡り会えたキミだけだ」とかだったから……最悪だ。


 チョロインたちはもちろん怒り出すし、そのときに勇者の五股もバレてしまった。


 ざまぁ……自業自得だよな。


 ただ、神聖な勇者対魔王の最後の戦いが、ドロドロ、ぐちゃぐちゃな愛憎惨殺劇場になってしまった。


 もう目も当てられないくらい、ひどいもんだった。


 嫉妬に狂ったチョロインたちの、殴る、蹴る、引っかく、噛みつく……攻撃は壮絶だったよ。地味に痛かった。


 なぜかオレもその乱闘の中にしっかり巻き込まれてしまって、チョロイン入り乱れての流血大惨事が三日三晩もの間、続いてしまったのである……。


 大混乱となった現場を収拾し、勇者に討伐してもらうのに、オレがどれだけ苦労したか……。


 ソレ以降、勇者とは同性体で対峙するというルールが加わった。


 ……とりあえず、オレの女装イベントはナシで、この国の滅亡の危機は、しっかり回避されたわけだ。


 女性の準備には、なにかと時間がかかるが、オレは男だからな。

 すぐに外出の用意が整う。


 リニー少年は宝石箱を持ち込んで、なにやらオレを飾りたそうにしていたが、丁寧にお断りする。


 準備を終え、しばらく待っていると、王太子がオレを迎えに来た。

 

 いつもと違って、ドリア王太子の服は、地味だった。


 魔法を使ったようで、ドリアのキラキラと輝く眩しい金髪は、オレと同じ黒色だ。

 深く、吸い込まれそうな翠の瞳も、ありふれた黒色になっている。


 地味といっても、オレと同じくらい、豪華な衣装だ。


 髪と瞳の色を変えたぐらいでは、あのキラキラしい輝きは隠しきれないようである。

 こんな手抜きな変装で大丈夫なのだろうか。


 というか、ドリア王太子ってば、めっちゃ、喜んでニコニコしている。笑顔が眩しいよ。いつもよりも三倍ほど輝いているよ。


 そんなに嬉しそうにされると、まあ、オレも外出を我慢してよかったなぁ、とほっこりしてしまうね。




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