第24章−2 異世界の軟禁は甘々です(2)
それ以降、注意して『勝者への憧憬』スキルで、勇者の記憶――娯楽――を覗いていたら、時間の流れがぐちゃぐちゃなのがよくわかった。
というか、十五代目でようやく気づいたのか、と、自分の迂闊さを呪ったよ。
百巻以上つづいている長編コミックなんだけど、まだ連載がはじまったばかりだったのが、次の勇者では、八十巻あたり、その次の勇者は五十巻までしか発売されていなかったりと……話がそれてしまったが、時間の流れには注意が必要なのだ。
舞台女優のサクセスストーリーを描いたコミックとか、怪しげな薬物で若返った探偵が事件を解決するコミックとか、なかなか続きを知っている勇者が召喚されなくて、オレはちょっとヤキモキしている。
うっかり、いきなりコミック漫画の最終巻を週刊誌で知ってしまったときは……数日間、衝撃から立ち直れなかったものである。そして、その勇者はそのコミックは購読していなかったものだから、オレは泣いた。
……話が逸れてしまったけど、勇者の世界にも『ウラシマタロウ』とかいう、恐ろしい事例があるくらいだ。
油断は禁物だよ。
とくに、いきなり最終回とかは、推理小説を最後の章から読むようなものだよね。
とまあ、ちょっぴりむずかしいことを考えてしまったが、ようやく、城の外にでることができる日になったわけだよ。
やっとだよ…………。
オレ、頑張って我慢したと思う。
これをきっかけに、滞っていた事態が動いて欲しいよ。
インドア派なオレではあるが、監禁だか軟禁だかよくわからない、ひきこもり停滞生活はもう嫌だよ。
こんな生活、さっさとオサラバしたいからね。
大神官長の死亡という、不測の事態があったとはいえ、城にいる者たちはオレのことを勇者様と呼ぶけど、誰もオレに魔王討伐を強制してこない。
オレって、なにをするためにココに喚ばれたんだったっけ? と、この頃、けっこう真剣に悩んでいる。
こっちの世界に来てなにをしたかというと、ドリア王太子とアレヤコレヤをして、たくさん読書をして、美味しいスイーツをたっぷり毎日食べている……ということくらいしかおもいつかない。
これは、まじでヤバい……。
なかなか魔王討伐をしなかったやる気のない困った勇者と同レベルだ。
オレは少しばかり恐怖と焦りを感じていた。
さらに、オレがこんなぐーたらな状況なのに、誰もなにも疑問に思わないのが、とてつもなくヤバいんだよ。
元の世界では、聖なる女神ミスティアナと、女神に仕える聖女が、召喚直後の勇者を褒めて、煽って、脅して、すぐさま魔王討伐へと誘導していた。
そのことに関しては、女神ミスティアナと聖女は容赦がなかった。
オレはこっちの世界の女神アナスティミアどころか、聖女様にすらお会いしていないんだよね……。
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