第22章−4 異世界のケーキは絶品です(4)
命令なら拒否してたけど、懇願されたらオレは弱い。
ドリアはふたりっきりのお茶会ではなくて不満たらたらのようだけど、オレはオレで、宰相の手のひらの上にいるようで、いい気分ではない。
ただ、実際に執務を頑張っている王太子や、それに振り回され……いや、仕えている家臣たちのことを考えると、これくらいなら付き合ってやるか、という気分にはなるな。
決して、オレは宰相の策略にはまって、従っているわけではないよ。
「マオとお忍びデートができるよう、わたしは頑張っているからな! もう少しで、国葬の残務処理も終わると宰相が言っていたから、近日中には外出できるぞ!」
ドリアは国葬の残務処理だけではなく、たまたま偶然にも紛れ込んでいた、通常の案件もこなしているようだが、本人は気づいていないようである。
腹黒宰相は、ドリアに不審がられないギリギリまでねばるみたいだねぇ。
「王太子殿下は、かつてないほど、精力的に政務に取り組んでいらっしゃいます。近衛騎士たちや文官も、余計な負担が減り、胃を痛めて休暇を申請する者が減りました」
フレドリックくんの褒めているのか、嫌味なのかわからない微妙な口添えに、ドリアはとても嬉しそうにふんぞり返っている。
(そ、そ、そこまで……問題児だったのか)
ちょっと呆れ返ってしまったね。
オレのことを救世主とか言う者がいるらしいが、そういう状況なら仕方がないのかもしれない。
残念な会話がなされているのだけど、ドリアの所作は洗練されている。さすがは王太子殿下だ。
ドリアのお茶を飲む姿は、優雅で気品に溢れている。
それだけに、口を開くと、残念感が極まってしまう。
ホント、残念だ……。
目の前のふたりは、先ほどからお茶ばかりを飲んでいる。
チョコレートケーキには、手をつけようとしない。
ドリアなど、視界にも入れたくないのか、オレばかりを見ているよ。
「政務が終わった後は、お忍びデートのコースを考えているんだ。絶対に、楽しい一日になるはずだ。当日を楽しみにしておいてくれ」
なるほど、だから、オレは安全な夜を過ごせているわけだな。
ドリアは目を輝かせながら、オレの手をとり、ぎゅっと握りしめる。
お忍びデートとやらを妄想しているのか、とても幸せそうな顔をしている。
一番、楽しみにしているのはドリア本人だろうね。
もう、お忍びデートじゃなくて、ただの外出だ、と訂正する気力はオレには残っていない。
こんなに、ニコニコ、キラキラと眩しい笑顔を向けられたら、観念するしかないだろう。
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