第21章−7 異世界の勇者はご褒美です(7)

 ただ読むだけはなく、軍運用や陣展開などは、問題形式の本もたくさんあり、オレがウンウン唸っていると、フレドリックくんが色々と教えてくれた。


 フレドリックくんの解説はなかなかにわかりやすく、よく理解しているのがわかった。


 近衛騎士じゃなくて、軍の指揮官の方が向いているのでは? とも思ったのだが、よくよく考えてみれば、この国も積極的な侵略行為はしていないから、軍に所属しても宝の持ち腐れなのかもしれない。


 王太子に振り回されている近衛騎士の方がなにかと忙しそうだ。


「勇者様、これで終了です」

「あ――。また負けた……」


 大将の駒を盗られてしまい、オレは頭を抱えた。


 オレが今、遊んでいる盤上ゲームは、兵士、弓兵、斥候、騎士などの駒を、マス目上の盤の上を動かして、相手の大将をとる……というものなのだが、最初のスタート時の駒の並べ方に色々なパターンが用意されていて、その状態から、どう、逆転するのか、逃げ切るのか……というのを競いあう遊びであった。


 ラーカス家の蔵書には、盤上ゲームに勝つための指南書もあれば、スタート時の駒配置を記したものや、終了時にこのような並びで終わるようにと記された本などがゴロゴロとでてきた。


 どれだけ好きなんだってツッコミたくなるくらいの多さだ。


 宰相家がまんべんなく大局を見渡すのなら、騎士団長家はのめりこむタイプなんだろう。


 なんか、親族が集まったら、筋肉自慢大会とか、腕相撲大会とならんで、盤上大会とかやってそうだ。


 最初は、護衛任務中とかで、相手をしてくれなかったフレドリックくんだが、蔵書の解説をしたことでなにかがふっきれたのか、盤上ゲームの相手をしてくれるようになった。


 オレの護衛よりも、オレが退屈しないようにするという任務にシフトしたのかもしれない。


 オレが好んで勝負を挑んでいる盤上ゲームだが、オレの全敗だった。

 リニー少年とやっても、オレが全敗した。


 一度も勝てた試しがない。


 オレは平和主義者だからな。

 こういうのは性に合わないんだよ。


 戦争に見立てた盤上ゲームは、オレの世界にはなかった。


 似たようなモノはあったが、オレがいた世界のものは、もっと駒の数も、盤のマス目も少ないシンプルなものだった。


 遊戯に関しては、そんなに強くはないとは思っていたのだが、こんなに弱いとは……びっくりした。


 元の世界では、みんなオレとやるときは、手加減してくれていたのだろうか……。


 それとも、異世界の頭脳戦のレベルが高いのだろうか。


 ちょっと気になる。


 リニー少年と対局すると、なんで負けたのかわからないくらい、あっという間に負けてしまうのだが、フレドリックくんの場合は、駒の動きがよくわかり、オレがどこで悪手をうったか、とか、局面がかわる一手があれば、そこへと至る筋道がよくわかった。


 不思議なもので、負けてるのに楽しい。


 退屈だなぁ……とは思いながらも、朝夕同じ時間にやってくるドリアの顔を見て、興味のある本を読み、ゲームを楽しんでいたら、一日はあっという間に終わっていた。




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お読みいただきありがとうございます。

魔王様はまだまだお外にでることができません。

なんということでしょう……。

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