第21章−6 異世界の勇者はご褒美です(6)
宰相家……ラグナークス家の蔵書は多岐にわたって、非常に興味深いものだった。
何代にも渡って収集されたであろう、農業、漁業、工業、産業、鉱山、衛生、医療、教育、治水……あげていったらそれこそキリがない。
本は大切に扱われ、古い本は何度も修繕された跡が見受けられた。
原本は閲覧に耐えられないくらいのレベルになってしまったとかで、写本もたくさんある。
知識を大切にし、本を宝として丁重に扱い、勤勉をよしとする家門だというのがよくわかった。
リニー少年がこの国のことを「学術分野では先進的な、牽引する役割を担っています」と説明したことがあるが、宰相家の蔵書をみれば、さもありなんと思った。
この本に書かれたことがそのままオレの世界にもあてはまるか……といえば、そんなに簡単なことでもないのだが……ここで得た知識はぜひとも、三十七回目以降の治世に活かしたいものである。
一方、騎士団長のラーカス家の本は、見事に、軍事関係と戦闘と筋肉と武器に偏っている。
賢い武闘派一門の蔵書って、こうなるんだな……っていう、よい見本だった。
料理本があったのには驚いたが、なんでも、健全な筋肉は効率的な食事から……だそうだ。
どの食物をどのように調理して、いかに摂取すれば、一番美しく筋肉が定着するとか……なんじゃこりゃ、なんだが、なかなかに面白い理論だ。
疲労回復によい食事とか、軍行のときに携帯するおすすめの食材とか。
軍が支給する味気ない保存食を美味しく食べるための本なんてのもあった。
栄養学もしっかりと研究されている。
外傷治療の外科的なことや薬学などもあり、正直なところ驚いた。
野営の知識であったり、山や海などで遭難した場合の生き残り術であったり……めっちゃサバイバルな本も紛れ込んでいた。
これは……今後、魔王討伐に出立したときに必要となる知識かもしれない。
正直なところ、ラーカス家のことをなめていた。
脳まで筋肉な戦闘家系かというと、そうではない。難しい本がいっぱいあった。
そうだよな――。
ひとりでわ――っと戦うのではなく、軍を率いて、戦って勝つためには、頭がよくないとだめだよね……。
オレの場合、勇者とは戦ってはいるが、基本は平和主義。
もちろん『魔王軍』なるものは存在しているぞ。
運営は家臣に丸投げだけどな。
侵略行為に使用するのではなく、もっぱら、外敵からの防衛と、治安維持にがんばってもらっている。
なので、真新しい知識にオレは興味津々。
よい勉強になったよ。
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