第21章−4 異世界の勇者はご褒美です(4)
国葬が終了してから五日後。
オレが異世界に召喚されてから二十四日目。
そろそろ日にちをカウントするのが面倒になってきた頃である。
この世界の暦は三十日が一ヶ月で、十二ヶ月で一年になる。
オレの世界は、二十日が一ヶ月で、十三ヶ月が一年になる。
オレの感覚では、一ヶ月以上、異世界監禁生活を送ったことになる。
オレの方が先に限界に突入したが、健気なことにドリア王太子は頑張っている。
ちょっぴり見直したよ。
ドリア王太子って、不純な動機があれば、頑張れるコなんだ……。
オレが大好きでたまらない……と、ことあるごとに宣言、いや宣伝しているドリア王太子は、朝のおはようの挨拶と、夜のおやすみの挨拶をしに毎日、せっせとオレの部屋を訪問したが、ドリアは軽く言葉を交わしてオレを思いっきりハグすると、足早に執務室へと向かっていく。
ドリアの言うことには、「マオの香りをいっぱい吸い込んだら元気になる」そうだ。
そうかい、そうかい。
吸ったあとは、もったいないからって息を止めてないで、ちゃんと呼吸するんだぞ……。
その香りは、リニー少年がチョイスしてくれている石鹸の香りだ。
なので、オレはリニー少年に、
「この石鹸の香り、王太子もお気に入りのようだよ。この香りをかいだら、やる気がでるそうだ。執務机の上に、五、六個、積み上げておいてはどうだろうか?」
って教えてあげたんだが、なんとも微妙な顔をされた。
「えーと、王太子殿下は、この石鹸の香りが好きではなくてですね……好きなのは、この石鹸を使われている勇者様の香りじゃないと……」
と言いかけて、口を閉じる。
言葉選びを間違えると、単に危ないヒトになってしまいそうだ。と思ったにちがいない。
少なくとも、オレはそう思った。
やっぱり、ドリアはドリアだった。
「……朝晩、勇者様にお会いできるのが、今の王太子殿下の心の支えになっております」
う……ん。
リニー少年に言われなくとも、近衛騎士たちからも、無言のなかに、切々と訴えてくるものがある。
フレドリックくんからも同じようなことを言われた。
でも、それだけでは、そろそろ限界かもしれない。
王太子にはりついている近衛騎士たちがソワソワしている。
ちかいうちに、なにか王太子殿下が、がんばれるようなことをやってくれ、と頼まれそうで、ちょっと不安だ。
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