第21章−3 異世界の勇者はご褒美です(3)

 国葬の残務処理と並行して、国葬の期間中、保留になっていた案件もさばかなきゃいけないからな。

 これから数日間は、マジで相当忙しいぞ……。


 『国葬を積極的にやっていく派』なオレでも、終了後、数日間の残務処理にはうんざりしてしまう。


 思い出しただけでも震えがくるのだが、それを耐え忍んでも得るものがあるからこその『国葬』なのだ。


 近衛騎士の言葉に、ドリアの頬がぷくっと膨らむ。


 勇者様からひとことお願いします! という近衛騎士たちの複数の視線を感じ、オレは椅子に座ったまま、ドリア王太子に視線をむける。


「……だそうだよ。がんばって、残務処理しような。それが片付いたら、ドリアがオレを大神殿に連れていってくれるんだろ?」

「あ。うん! わたしが、ドリアを案内してやる。デートしよう!」


 本の壁が邪魔してオレにはよく見えなかったが、ドリアの顔にはキラキラ笑顔が浮かんでいるのだろう。


「神殿に行ける日を楽しみにしているよ。それまでに、オレはがんばって、この借りた本を読み終えているからな」

「うん。わかった。わたしもマオとのデートをがんばるぞ」


 うん。安定の、噛み合ってない会話だ。


 ドリアの側近は大変だろうな――と、思ってしまう。


「がんばれよ。読書に飽きてしまったり、読む本がなくなったら、ひとりで大神殿に行ってしまうかもしれないから、がんばれよ!」

「わかった! まかせろ! マオをひとりで外出されるわけにはいかぬからな!」


 そう言い残すと、ドリアは部屋をでていった。


 別に、ひとりでもいいし。


 フレドリックくんとリニー少年に案内してもらったら、それで十分だし。


 いや、その方が、安心して外出できそうな気がするし……。


 と思いつつも、オレだけで勝手に城の外にでたら、ドリアのことだから、ショックで寝込むかもしれない。


 それはそれで気の毒だ。

 フレドリックくんやリニー少年も言ってたとおり、国王代理としてがんばって大神官の国葬をとりしきったもんな。


 内容はアレだったけど、禁書庫の閲覧許可を得るために色々と動いてくれたわけだし。


 賑やかなドリアと外出したら、きっと楽しいだろう……。


 刺激的な外出になりそうだ。


 うん、そういうのも、たまにならいいかもしれない。


「お待ち下さい! 王太子殿下!」


 という近衛騎士たちの叫び声を聞きながら、オレは手元の本へと視線を落とした。




***********

お読みいただきありがとうございます。

フォローや励ましのコメント、お星様など、お気軽にいただけますと幸いです。

***********

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る