第20章−7 異世界の監禁は退屈です(7)
フレドリックくんの意味深な言い回しに、オレの眉が跳ね上がる。
「はあっ? 一緒に出かけたい?」
「はい。一緒にお出かけしたいそうです」
(オデカケだと……?)
「誰が誰と?」
「王太子殿下が勇者様とです」
「……ふっぅ、ふざけるな――――!」
オレの怒りが爆発する。
「も――――っ! でて行くぞ! 外にでてやる! 絶対に、でてやる!」
「ダメです。外出は認められていません!」
「ゆ、ゆ――――しゃ、しゃまっ! おち、落ち着いてください!」
扉へと向かって歩き始めたオレを、フレドリックくんは背後から羽交い締めにし、リニー少年はオレの足にすがりつく。
「これが落ち着いていられるか!」
「それでも落ち着いてください!」
「王太子殿下は、勇者様との初王都見学デートを所望しておりますからっ! 城外には出ないでください! おねがいします!」
リニー少年の言葉に、オレの動きが止まった。
「な、なに……ソレ。なんか、今、デートとか、変な言葉が聞こえた?」
背中がゾワゾワした。
魔王が誕生して困っているんじゃないのか?
それなのに、呑気にデートだとお?
オレの眉が釣り上がる。
どういう理由でオレはこの世界に召喚されたというんだ!
元の世界にひとり残された三十六番目の勇者に、申し訳ないと思わないのか!
サクサクオレの部下を討伐して、最短でやってきた三十六番目の勇者の気持ちがよくわかった。
元の世界にやり残したことがあったら、さっさと用事を片づけて、ソッコーで帰りたいよな。
こんなわけのわからん茶番に、懇切丁寧につきあいたいとは思わないよな……。
もう、次から、勇者召喚は、魔王の謁見の間でやって、召喚直後すぐに討伐開始してもいいんじゃね?
って、思うくらい、今のオレはやさぐれていた。
「……王太子殿下は、勇者様が初めて城外に出られるときは、自分が案内すると張り切っていらっしゃいます」
「なにに、張り切っているんだ?」
「国葬を無事にとりしきることです。あと、勇者様とどこに行くのかも計画されているようで……」
いやいや、どこに行くかって……オレ、何度も、大神殿に行きたいって言ってませんでしたっけ?
言ったつもりだったけど、言ってなかったのかな――。
ドリア王太子から口止めされていただろうが、オレを止めるためにはやむなしと、リニー少年は判断したのだろう。
いったん、口が滑ってしまうと、あとは勢いに任せて、全て暴露するだけだ。
さぁさぁ、包み隠さず、あらいざらい話すんだ。全部吐いてすっきりしようじゃないか?
「もしかして……なにか……交換条件とかやっちゃったのか?」
魅力的な餌をちらつかせて、ドリア王太子をその気にさせているのだろうか。
政治には高度な駆け引きも大事だろうが、そうでもしなければ王太子としての責務をまっとうできないドリアに、オレは一抹の不安を覚える。
まあ、仕事をするうえで『ご褒美』は必要だよね。『ご褒美』の必要性は認めるよ。
リーマン勇者たちも、自分自身で『ご褒美』を設定して、過酷な仕事をこなしてたからなぁ。
だからといって、オレが『ご褒美』になるのは、ちょっといただけない。
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