第19章−7 異世界の示談は難しいです(7)
鍵を返したらなにかある、タダでは受け取ってくれないと覚悟はしていた。
たが、ここまでとは、オレも考えが及ばなかったよ。
困ったことに、泣き顔もすごくキラキラしていて、オレの胸にぎゅんぎゅん突き刺さってくる。
これにはオレも困ってしまった。
王太子の熱烈なアピールには辟易しているが、別に意地悪して泣かせたいわけではないからね。
色々と残念なところが気になるけど、だからこそ放っておくことができないんだ。
いうなれば、目が離せない、頼りないけど、無条件で慕ってくれる可愛いくてたまらない後輩……だろうか?
「……ドリアがどれほどオレのことを想ってくれているのかは、よくわかった」
うん。ご先祖様の恥を、異世界からやってきた勇者モドキに晒すことに、全く躊躇しないくらい、オレのことを想っている……というのはビンビン伝わったよ。
「だったら、なぜ、わたしの『愛の証』を返そうと思うのだ? マオがわたしを……愛していないからか?」
そういうことなんだろうけど、ドリアの真剣な表情を前にして、オレは言葉に詰まってしまう。
そんな顔をされると、決意が揺らぎそうだった。
鍵を握りつづけるドリアの手をとり、その手をオレの胸に押し当てる。
「大丈夫。ドリアの気持ちは、ちゃんと、ココに届いているから心配するな」
それは嘘じゃない。
ドリアがすっごく、オレを好きになってくれているってことは、よくわかってるよ。知ってるよ。
「ま、マオ……」
「この鍵はドリアが持つんだ。もう二度と、『あんなこと』はしないという約束を思い出すためには、必要な鍵だ」
そう、嫉妬に狂って、オレを無理やり押し倒し、準備もなくはじめるのはやめてくれ……。
「わかった。そうだな。マオの言うとおりだ。わたしは、マオを傷つけないと誓ったんだ。次からは大切にする」
「ああ。そうしてくれ」
「この『愛の証』に誓って、もう二度と、マオは傷つけない」
オレは静かに頷いた。
そんなイカガワシイモノに誓わないで欲しいと言いたいところだが、上手く話をまとめるためにも、ここは沈黙だ。
宰相の方を見ると、こっちの方を向いて軽く頷いている。
どうやら、合格点をいただけたようだ。
「で、マオ。次はいつなのだ?」
「へ……?」
「わたしはあと、どれくらい待てばよいのだ?」
「…………」
ドリア王太子の言葉に、寝室にいた者たちは、盛大なため息を吐き出した。
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ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
王太子殿下の脳内が心配です。ピュアなんですよ! ピュア!
次はいよいよ第20章に突入です!
フォローや励ましのコメント、お星様など、お気軽にいただけますと幸いです。
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