第18章−7 異世界のお姫様抱っこはほわほわです(7)
オレもリニー少年の後を追って浴室へ……と思い、寝台から降りようとしたが、仮死状態からの寝起きのためか、魔力不足が響いたのか、身体が大きくふらつき、足がもつれた。
視界が大きくブレて、そのままバランスを崩してしまう。
寝台から床の上に転がり落ちる、と思ったが、次の瞬間には、フレドリックくんの逞しい腕がオレをすくいあげていた。
そのまま、何事もなかったかのように、ひょいと抱き上げられる。
逞しい胸と、馴染みのあるフレドリックくんの匂いに包まれ、オレの心がふっと緩んだ。
洗練されたよどみない一連の動作に、オレの体温が一気に上昇する。
かっこよすぎるんだよな……。
オレは顔を真っ赤にさせながら、ぽそぽそと「……あ、ありがとう……」と、小さな声でフレドリックくんに礼を述べる。
「いえ……。あまりご無理はなさらないように。このまま浴室までお運びいたします」
「た、たのむ……」
淡々としたフレドリックくんの対応が面白くなくて、なぜか少しだけがっかりする。
フレドリックくんは、オレを軽々と抱いたまま寝室をでていく。
移動の揺れに驚いたオレは、思わずフレドリックくんの首に腕を回し、しっかりとしがみついた。
慣れというものは恐ろしいもので、お姫様だっこされるのにも身体が馴染んでしまっている。
どのように体重をかけたら安定するか、どんな風に身体を預けたら相手に負担がかからないか、抱かれ方のコツというものがわかってきた。
それにしても、異世界に召喚されて以降、オレの『お姫様抱っこされる率』がものすごく高くなりつつあるのが情けない。
いきなり初日から、アレだったからなあ……。
ドリア王太子といい、フレドリックくんといい、オレを抱いても歩調は乱れない。
軽々と扱われているが、ふたりには遠く及ばないが、オレだってそれなりに成人男性としての体格をもちあわせているんだよ。
ふたりとも相当な力持ちだ。
もしくは、筋力増強のブースト魔法をこっそり使っているのかな。
表情があまり動かない赤髪の護衛騎士に、壊れ物を扱うかのように抱っこされると、オレの心は、ほわほわと舞い上がってしまう。
だけど、フレドリックくんにはこれといった変化はないね。ただ淡々と、己の任務をまっとうしているだけだ。
フレドリックくんに運ばれてドキドキしているのは自分だけなのかと思うと、ちょっと悔しい。
浴室への移動中、オレはこの数日間のことを思い出していた。
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お読みいただきありがとうございます。
魔王様! 魔力消費は計画的に。使いすぎは厳禁ですよ。
『愛の証』を突き返された王太子殿下はどうなっちゃうんでしょうか?
次章お楽しみに〜!
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