第18章−6 異世界のお姫様抱っこはほわほわです(6)

 このままの状態で、王太子が王様になっちゃうと、臣下もだが、民が気の毒だ。亡命とかあるけど、一般的には、民は王を選べないからね。

 ドリアは残念な性格で、王様には向かない純真なヤツだけど、悪いヤツではない。


 別のヤツが王位を継いだ方がいいんじゃないのかなぁ……とは思うけど、部外者というか、この世界の住人ですらないオレが、他人の家の後継問題に口を挟むのは間違っている。


 王太子が残念なぶん、幸いにも周囲が一丸となって支えようとしているので、自分でなにもかも背負い込まずに、それを上手く使える王様になってくれたらいい、とオレは思うんだ。


 先輩として、それくらいなら指導しても問題ないだろう。


 暴君や暗君と言われ、皆から恐れられて嫌われるドリアはみたくないからね。

 民からも臣下からも愛される王様になって欲しい。

 みんなから愛され、慕われる国王となったドリアの姿を見たいと思うのは、オレのワガママだろうか?


 夕方というにはまだ少し早い時間だった。だが、書庫はそろそろ閉庫の時間となる。

 新しい本を借りて読書……という時間の使い方は諦め、オレは夜までまったりと過ごすことにした。


 実のところ、書庫で見つけたホラーな本に戦慄し、禁書庫のピンク、ピンクした本に悶絶した精神ダメージは、まだ回復していなかった。

 禁書庫でトドメを刺されたからね。


 オレの心は、オレが考えていた以上にピュアだった。オレの心の傷は思った以上に深かったようである。


「夕食までになにか、軽くつまめるものをご用意いたしましょうか?」


 あいかわらずオレの胃袋の心配をするリニー少年に、苦笑が漏れる。

 なぜ、そんなにオレにご飯を食べさせたいのかよくわからない。


「大丈夫。食べなくても平気だよ。それよりも、風呂かな……」


 入浴タイムには少しばかり早いが、魔力が回復した状態でさっぱりして、スッキリした頭でこれからのことを考えたい。


 リニー少年に躰と髪を洗ってもらって、仕上げにその小さなゴットハンドで、全身マッサージされるのがいい。


「わかりました。準備いたします。しっかりと磨き上げましょうね!」

「…………」


 オレの言葉に、憂いに沈んでいたリニー少年の顔がぱっと明るくなり、軽やかな足取りで寝室をでていく。


 リニー少年は、オレがこれから王太子を迎えるための身支度をする……と大きな勘違いをしているようだが、ウキウキしている後ろ姿を見るに、訂正するのも心が傷んだ。


 ヒラヒラフリフリの薄い服とか、紐パンとか用意されなければ……。後は……まぁなんとかなるだろう。




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