第18章−5 異世界のお姫様抱っこはほわほわです(5)

 金髪の小姓はうんうん、と何度もフレドリックくんの言葉に頷いている。

 オレもフレドリックくんの推察は間違っていないと思った。


「リニーくん、くれぐれも、ドリアには、変な誤解と期待はさせないように、細心のの注意を払って伝えてくれよな?」

「難しいですが、努力いたします」


 うん。とっても難しいだろうが、がんばってもらわねばならないだろう。


 大人が子どもに難問を丸投げするっていうのもどうかと思うけど、やる気満々で寝室から退出するリニー少年に、オレは心からのエールを送った。


 しばらく寝台の中でおとなしく待っていると、ひと仕事を終えたリニー少年が戻ってくる。すっきりした、いい表情をしていた。

 うまく話がまとまったのだろう。


 というか、もっと時間がかかるものだと思っていたのだけど、戻りの速さにオレは内心で驚いていた。

 また『宰相の息子』権限を使って、お父さんの仕事中にずかずかと割り込んでいったにちがいない。


「勇者様のご意向は、父にしっかりと伝えておきました」


 リニー少年が頬を上気させながら、誇らしげに報告する。

 その姿は年相応に見えて、なんだか微笑ましい。


 お父さんのことをとっても信頼しているのだろう。悪いようには絶対にならない、と信じきっているよ。

 オレはいまいち、宰相サンは信じてないけどね。


「近衛騎士たちの間では、殿下の集中力の限界を感じ取っていたようで、本日、勇者様に……励ましのお言葉……を賜りたいと願い出る予定だったそうです」


 ナイスタイミングというか、お互いの利益が一致した……のか?


 リニー少年の奇妙な『間』からは、言葉以上の行為を求められていそうな気もしないではないけど、ここはしれっと気づかないフリだろう。


 とりあえず、オレは今晩、王太子に禁書庫の鍵を優しく返却し、「国葬終了までがんばってね!」って応援することとなった。


 ドリア王太子には、リニー少年ではなく、彼の父親の宰相サンが、王太子が所在不明になっても問題ないタイミングを見計らって、用件を伝えてくれるそうだ。


 リニー少年のお父さんは、余計なことをついでに企みそうで、イマイチ信じられないヒトだけど、ここは宰相サンに任すしかないよね。


 オレの叱咤激励で、ドリア王太子をやる気にさせて、宰相サンと近衛騎士へ『貸し』を作るのも悪くはないだろう。

 

 うん。コストが安くて、威力効果のある『恩』は、売れるときに高値で売っておくに限る。


 魔王としてだが、三十六回、オレも一国の頂点に立ち、国を治め、民を導いてきた身だよ。

 経験豊かな先輩として、後輩を指導教育するのもアリだろう。



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