第18章−3 異世界のお姫様抱っこはほわほわです(3)

 そんなわけで、呪いのアイテムとほぼ変わらない禁書庫の鍵は、さっさと王太子に返却しよう……と思うのは自然な成り行きだろう。


 下手にずるずると所持しつづけて、変な誤解を王太子に与えても不味いからね。

 確か『愛の証』とか言ってなかったっけ?

 こういうときは、すぱっと……思い切りも必要なんだよ。


 オレはリニー少年に、王太子と話をしたい、という旨を伝える。


 一応、あんなものだけしか保管していない場所であっても、まがりなりにも禁書庫と呼ばれている特殊な場所に、入室できる証明となるものだよ。


 紛失するとなにかと面倒そうだもん。

 そういう面倒なモノは、他人の手を介してではなく、オレ自身の手で返却するのが礼儀だろう……。


 国王代理としていろいろやらなければならない王太子は、日増しに忙しくなっているそうだ。


 ドリア王太子の顔をあまり見ていないから、じっくり眺めたいな……なんてコトはこれっぽっちも……いや、少しだけ、思ったりもするけどね。


 王太子はいたらいたで鬱陶しいけど、いなかったらいなかったで寂しい存在だよね。


 ちゃんと王太子として、国王代理としてやっていけているのか、自分の目で確認したい、という気持ちもあったりするし。


 たまになら、会ってお茶くらいならしてもいいだろう? それ以上の交流となると、重くなるので、ちょっと遠慮したいところだけどね。


「殿下にお会いしたいのですか?」


 リニー少年の顔には「なんで、自ら猛獣の巣穴に飛び込むようなコトをするんですか?」と書いてあったよ。

 まあ、その反応、わからなくもないね。


 フレドリックくんは無言だったけど、リニー少年とほぼ同じ、いやそれ以上に過激なことを思ったにちがいない。あの顔はそういう顔だった。


「ドリアには……積極的には会いたくはないんだが、禁書庫の鍵をさっさと返却したいんだよ」


 あの重量感ばっちりな黄金の鍵ってば、所持しているだけで、呪われそうな気がするんだ……。

 こういう『重たいアイテム』は、さっさと手放すのがよいだろう。


「勇者様、国葬が終了するまで、禁書庫の鍵は、そのままお持ちいただくことはできませんか?」


 フレドリックくんが遠慮がちに口を挟んできた。


「いやぁ……『愛の深さ』とか『愛の証』って、重すぎるだろ?」

「確かに、重すぎますが、その重たい『愛の証』を国葬中に返却されたら、王太子殿下の集中力が途切れてしまいそう……というか、まちがいなく、集中力が切れてしまいます」


 めっちゃ沈痛な面持ちで言われてしまったよ。

 なんだか、オレが悪者になったような気分だ。



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