第18章−2 異世界のお姫様抱っこはほわほわです(2)

 ふたりには眠る前に、魔力回復のために仮死に近い状態になるかも……と断りをいれておいたのだが、不安にさせてしまったみたいだ。


 オレの仮死状態を初めて見たら、そのリアルさに驚くだろうな、とは思っていたけど、やっぱり驚かせてしまったようだ。ほんと、ふたりには悪いことをしてしまったよ。


 ありがたいことに、ドリア王太子には、体調を崩して寝込んでいるということだけを報告し、オレが仮死状態にまで陥っていたことは秘密にしておいてくれたようだ。


 たぶん、そんなことがドリア王太子に知られたら、大神官長の国葬どころじゃないだろう。大騒ぎになっていたにちがいない。


 というか、勘違いしたドリアがオレを国葬しそうだ。


 その点、このふたりは冷静に対処してくれた。

 やっぱり、頼りになる人たちである。

 元の世界に戻るときは、ふたりまとめてお持ち帰りしたい。


「悪かった。ふたりには、ずいぶんと心配させてしまったようだな。魔力は回復したみたいだから、もう大丈夫だ……」


 と、強がってみせたものの、回復したのは魔力だけ。しかも、全回復ではない。


 回復率の悪いこちらの世界だと、全回復には、あと二、三日はかかりそうだねぇ。


 まあ、そこまで悲観することもないだろう。元の世界でのオレの回復率が異常だっただけで、特に問題視するほどでもない。

 うん、よくある「二、三日寝とけば勝手に治る」というパターンだね。


 普通、異世界に召喚されたら、召喚特典とかついて、チート状態になるはずなのに、オレにはその気配がない。

 ステータスを確認してみたけど、いくつか見慣れない謎なスキルが増えていた。謎なので、使い所がわからなくて、全く役に立たない。

 基本値は……強いことには変わりはないんだけど、端数の部分が微妙に減退していた。


 もともとチートな奴が、異世界に行っても、これ以上、どうしようもありません……ということかな?


 だよね? それとも、オレってもしかして、異世界に召喚されて弱くなってる?

 いや、気のせいだろう。


 オレのいた世界とこの世界との相違を、改めて思い知らされちゃったね。


 そもそも、本を読むために、こんなに魔力を消費するなんて、初めてのことだったよ。

 勇者との最終決戦並みの魔力消費量で、ふざけるなといってやりたいね。


 司書がうっかり手にしたら、魔力を吸い取られて、干からびて死んでしまうくらいのレベルだったよ。

 だからこその禁書庫なのだろう。


 花といい、本といい、非常にデンジャラスな世界だ。この世界のヒトたち怖い。


 というか、この世界の禁書庫はどうなっているのかと、オレは問い質したい気持ちでいっぱいだった。


 異世界の禁書閲覧のシステムって、つくづく恐ろしいね……。




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