第18章−1 異世界のお姫様抱っこはほわほわです(1)

 翌日……。


 なんとまぁ恥ずかしいことに、オレは魔力枯渇状態で寝込んでしまった。


 魔術封印をほどこされた禁書を閲覧するために、連日格闘し続けた結果、無駄に魔力をごっそり消耗してしまったからなんだけど、疲労困憊で、足腰が立たなくなってしまったんだよね。


 ものすごく頑張ったのに、得た情報がアレ関連のことばっかりだったので、精魂尽き果て、心が折れてしまったと言ってもいいかな。

 魔力を消耗したダメージよりも、そっちの精神的苦痛による疲労が原因だろうね。


 オレって、とんでもない世界に喚ばれてしまった。

 それとも、異世界って、こんなものなのだろうか?


 オレは昼まで目覚めることなく、こんこんと眠り続けた。午後のお茶の時間になって、ようやく目が覚めたんだ。


 目が覚めたとき、広い寝台の中はオレだけだったが、寝台のすぐ脇にリニー少年とフレドリックくんが控えていてくれたことに、心の底からほっとした。


 右も左もわからぬ異世界に召喚され、知り合いもいないオレにとって、ふたりはとても大事な存在だった。

 というより、オレは相当このふたりに依存しまくっているようだ。


 仲間大事……。


 お友達は大切にしましょう……。


 オレの心のノートに新たな教訓が書き加えられた。


 これからは、勇者にくっついてくるオプションをチョロインとかいって、蔑むことはやめよう。

 うん、悪かった。歴代のチョロインたちよ。

 異世界から連れてこられて不安でたまらない勇者を、身を削って支えた要人として待遇しないといけないよな、と、オレは心に決めた。


 オレはふたりの手を借りて、なんとか上体を起こすことができた。

 ただ、まだ寝台からはでない方がよいとふたりに全力で止められて、背中に置かれたクッションにしぶしぶ身を沈める。


 魔力が足りなくて、なんだが靄がかかったかのように、意識がぼんやりとしている。

 ふたりが指摘したとおり、オレはまだ本調子ではないようだね。じっとしておいた方がいいみたいだ。


 異世界だからか、回復に時間と魔素が今までよりも必要っぽいな。


 実際に確認はしていないけど、ふたりが言う通り、顔色もそうとう悪いんだろう。


 視界と意識はぼんやりとしていたけど、不安げなリニー少年とフレドリックくんの眼差しははっきりと感じていた。


 オレは背中に置かれたクッションに身を沈めながら、自分の魔力が、この短時間でどれだけ回復できたのかを確認してみる。


「勇者様、ご気分はいかがですか?」


 リニー少年が心配そうな顔をしながら、コップに注いだ水をオレに手渡してくれた。

 喉が渇いていたオレは「ありがとう」と受け取ると、それを一気に飲み干す。


 冷たい水が、身体の隅々まで行き渡るようだった。


 気分は……まあまあだ。

 よくもないが、悪くもない。


 空になったコップを返し、オレの様子を伺っているリニー少年とフレドリックくんを見比べる。ふたりとも顔色があまりよろしくないみたいだ。




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