第17章−5 異世界の禁書庫はピンクです(5)

 くらくらするポエムはフェイクで、なにかの暗号か? とも思ったんだけど、解析した結果、全冊、恥ずかしいポエムでしかないと、改めて認識することとなっちゃったよ。


 ポエムの他にも、恥ずかしい手記やら、日記やら、恋の悩み……ほとんどが恋の悩みを書き綴ったものがでてきたよ。


 それは、ほんわりしたメルヘンなものではなく、オコチャマには絶対に読ませたくない、赤裸々な内容がびっちりと書かれていた。

 なんだか、思いのたけを記したのか、一字一句に込められた想いが呪術めいていて怖かったよ……。


 わざわざ豪華な表紙にするか? と疑いたくなるようなモノばかりである。

 禁書にしたくなる気持ちはよくわかる。

 他人にはほいほいと見せたくないだろう。


 というか、そういう恥ずかしい本は残さず燃やせよ……と思うオレは酷いヤツだろうか?

 禁書庫の無駄遣いでしかない。


 厳重な鍵付きの戸棚に保管されていた本は……歴代の王様の夜の記録だった。

 つまり、誰といついつ寝て、どんな会話をして、どういうことを何回して、いついつ終了したか……という詳細記録である。


 お世継ぎ問題とか、睦言で寵姫が変なお願いをしないか、といった意味合いで残しているのだろうね。


 これもまた、ノンフィクションだ。

 しかも、かなりリアルで臨場感あふれる記録だった。

 記録なのに、なにやら文学臭のするものまであったよ。


 歴代国王の嗜好もなにもかも暴かれた内容に、オレは恥ずかしいと思う以上に血の気が失せた。

 ドリア王太子のルーツを垣間見たような気がする。


 さすがにその内容はすっとばし、とりあえず、本に仕掛けがあるかどうかだけを調べて終了することにした。


 副産物として、王太子が一途で相手が同性でもガンガンいくのは、血筋なんだな……ということがわかったかな。


 オレは意図せず、歴代国王の恋愛事情と好みを把握してしまった。オレはこんなことを知りたかったんじゃない、と、心のなかでさめざめと泣いたよ。


 二日目の早い段階で、オレは資料室には保管できない置き場所に困ったモノを、とりあえずセキュリティが万全な禁書庫に持ってきました……という意図を感じ取ったのだが、内容が腐っていても、ピンク色のものばかりでも、禁書庫は禁書庫である。


 表向きはピンク色に見せかけて、腐った臭いを漂わせていても、実は、禁忌とされる知識や魔術が隠されている可能性はまだ残っている。ゼロではないよね。


 そう自分自身に言い聞かせ、オレは萎える心に鞭打って禁書庫の本と格闘した。


 オレの予想通り、本には色々と仕掛けが施されていたよ。

 だが、最初から最後まで、内容はピンク色だったけどね……。


「そろそろ夕食のお時間です」


 と、フレドリックくんに声をかけられるまで、オレはずっと放心状態だった。


(異世界の禁書庫って恐ろしい……)




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お読みいただきありがとうございます。

禁書庫……恐ろしい場所でした。別名、開かずの間、もしくは、物置……。

フォローや励ましのコメント、お星様など、お気軽にいただけますと幸いです。

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