第16章−6 異世界の愛の証は重たいです(6)
「王太子殿下、お時間です!」
開いたままになっていた扉から、ドタドタと近衛騎士たちが部屋の中に踏み込んでくる。
一応、時間ギリギリまで廊下で控え、王太子がオレと会う時間をひねくりだしていたようだ。
部屋に入ってきた五人の近衛騎士は、王太子づき……フレドリックくんの同僚だ。
通常任務のフレドリックくんとは違い、彼らは国賓対応仕様の近衛騎士の正装で、とても格好いい。
その姿を見ていると、フレドリックくんの正装も見てみたくなる。
きっと、この中で一番格好いいに違いない。
王太子といい、近衛騎士といい、やはり、それなりのモノがそれ以上に見える衣装デザインは大事だな、とオレは痛感した。
「もうちょっと、マオと逢瀬を楽しみたい。……腹の調子が悪いということで、時間を延長してくれないか?」
「よく効く下痢止めの薬を用意させますので、延長は許可できません」
「仮病に決まっているだろう! 空気を読め!」
「空気を読まずに、晩餐会を抜け出すようなヒトには言われたくありません!」
近衛騎士たちは四人がかりでオレにくっついている王太子を強引にひっぺはがすと、そのままずりずりと部屋の外へとひきずっていく。
「マオ――! いやだあぁぁぁぁぁ。もっと、マオとおぉぉぉぉっ!」
「王太子殿下、静かにしてください」
「これ以上、席を外していると、本当に、下痢かと思われてしまいますよ」
「もうちょっと、格好いいところを勇者様に見せたらどうですか?」
近衛兵と王太子の情けない会話が、どんどん遠ざかっている。
王太子も王太子だが、近衛騎士たちも近衛騎士で残念感が満載である。
「勇者様、ご歓談中のところ失礼いたしました」
「い、いや……。なんか、大変そうだな」
オレの言葉に、ひとり残った年配の近衛騎士は目にうっすらと涙をにじませる。
「我々の苦労をわかっていただけるとは……流石、王太子殿下が惚れた勇者様です」
社交辞令のつもりで言った言葉に、そこまで感激されても困る。
というか、なんか、今、不穏な単語が聞こえた。
「勇者様。ご覧の通り、王太子殿下は少しばかり残念な感じですが、勇者様にお心を開いているからこそ、いつも以上に残念な感じになっております。普段は少しだけ残念な感じですので、見捨てないでやってください」
(……フォローになってないぞ)
近衛騎士を見送った後、オレは手の中に残った黄金の鍵に視線を落とした。
鍵はオレの手の中で、王太子と同じようにキラキラと輝いていた。
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お読みいただきありがとうございます。
さて、呪いの鍵……ではなく、禁書庫の鍵をようやく手に入れた魔王様。
次章では、禁書庫の秘密が暴かれる!……のか? 乞うご期待!
フォローや励ましのコメント、お星様など、お気軽にいただけますと幸いです。
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