第16章−1 異世界の愛の証は重たいです(1)

 エルドリア王太子は何を考えているのか……というか、ぶっちゃけ、なにも考えていないというのがよくわかる、己の欲望に真っ直ぐなヒトだ。ある意味、ものすごくわかりやすいヒトだね。


 それに比べ、フレドリックくんは、何を考えているのかよくわからないというか、底が見えないヒトだった。


 ちなみに、リニー少年はなにを企んでいるのかわからないオコチャマである。


 三人が三人とも個性豊かというか、敵にまわすと、いろいろやっかいというか、めんどくさそうな連中ばかりだ。


 実際のところ、フレドリックくんはオレのことをどう思っているのか、よくわからないんだよねぇ。


 嫌われてはいない……だろうけど、オレに対する接し方は、あくまでも任務上の、護衛対象者でしかないような気がしてならない。

 あれはからかわれたのだろうか?

 いや、フレドリックくんの真面目な性格からして、そんなことはないだろう。

 うん、たぶん。

 オレの直感……間違っているんだろうか?


 フレドリックくんに変化がみられないことにたいして、ちょっぴり残念に思っている自分の気持に気づき、オレは内心焦っていた。


 昨晩は、木目が怖いとか……色々と恥ずかしいところを見せてしまったので、フレドリックくんが、なにごともなかったかのように接してくれたのには、正直なところ、ホッとしたよ。


 でも、でもね……なんとなく……なんとなくなんだけど……オレは物足りなくも感じていたんだ。


 もうちょっとこう、色々とイベントがあってもいいんじゃないだろうか?


 こっちの世界に召喚されてから、息つくヒマもなく次から次へとイベントが起こったので、もうひとつやふたつ増えても、オレは全く驚かないし、「次のイベントさっさとでてこいや!」っていう気持ちにもなっている。


 ドキドキしていたのは自分だけかと思うと、めちゃくちゃ恥ずかしい。

 と同時に、肩透かしを食らったような残念な気分になっていた。


 ドリア王太子があまりにも積極的すぎたので、控え目な態度をとられると、ものすごくとまどってしまう。

 こっちの世界に召喚されて、オレはずいぶんドリア王太子の影響を受けていたようだね。

 フレドリックくんの淡々とした態度を、ちょっと寂しいと思ってしまうオレは、あまりにも身勝手すぎる……かな?




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