第15章−6 異世界の本は強烈です(6)

 先日、オレが王太子の乱暴から逃れるために、電撃魔法を中庭に落としたことがあった。


 電撃魔法はたった一発……。


 その『謎の落雷』を、この国の人々は「国に貢献した大神官長への労いが足りぬから、神がお怒りになったのだ」という風に解釈したため、国葬期間は一週間延長され、内容もかつてないほど立派なものになったらしいよ。


 たった一発の電撃魔法の影響力って、侮れないね。驚いたよ。

 もしかして、オレってば、やりすぎちゃったかな――?

 もう、これは墓場まで持っていかなきゃならない案件だね。


 脱走の常習犯である王太子殿下だが、こういう状況下では、脱走している場合ではないだろう。

 国の代表がフラフラしていて、また雷が落ちでもしたら……と人々は思っているようだね。

 王太子もオレに会おうと必死だが、家臣団も王太子を逃さないよう、死物狂いでがんばっているんだって。


 国王代理である王太子が逃げたら、亡くなった大神官長にも失礼だが、国葬に参列するためにやってきた国賓に対して無礼だろう。


 それにしても、国賓がいっぱい参加しているというのに、オレはこの立派な客間に居座りつづけても大丈夫なのだろうか?


 気になったのでリニー少年に質問してみたのだが、


「勇者様以上の国賓などいらっしゃいませんので、ご心配なく。堂々とおくつろぎください」


 と、さらりと言われてしまった。

 そして、


「王太子殿下も国葬中の厳戒態勢下では、逃げ出すことなど不可能でしょう。心穏やかに、のんびりとお過ごしください」


 とも言われてしまった。


 オレ、もしかして、リニー少年に甘やかされているのではないだろうか? と思いつつも、そのお言葉に遠慮なく従うことにした。


 今日は王太子の「あけてくれー」攻撃もなく、オレは久々に、落ち着いた一日を過ごした……ような気がする。


 部屋からでて、書庫で読書をした。

 国葬中は書庫を利用する者も少なく、ほぼオレの貸し切りとなったんだ。

 いつもは複数いる書庫の管理人も、今日は半数しかいなかったよ。

 まあ、本なんか読んでいる場合じゃないってことなんだろうね。


 夕食はフレドリックくんと食べた。

 ちなみに、昨晩、添い寝してくれたフレドリックくんとは、朝食も昼食も三時のお茶も、夕食後のお茶も一緒だった。

 王太子の耳に入ったら、大変面倒なことになりそうではあるね。


 ただ、オレを口説くと言っていたフレドリックくんだが、そういうそぶりは全くなかった。


 オレはものすごく緊張していたのに……。


 いつもどおり、近づきすぎず離れすぎずの距離を保ちつつ、オレの邪魔をすることもなく、フレドリックくんは護衛任務を続けていたのである。


 あれ……?

 おや……?

 なにも起こらないんだけど……フレドリックくんってば、どうしちゃったんだろう?



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お読みいただきありがとうございます。

魔王様ですが、夜のトイレが怖いと言っています。怖いものがありすぎて大変です。

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