第14章−1 異世界の告白は突然です(1)

 フレドリックくんが黙ってしまったので、オレも無言でおかわりの紅茶を飲む。


 禁書庫の閲覧許可がでるまで何日待たされるかは、王太子の努力次第だ。

 それまでの間は、書庫に入り浸って、読み飛ばした推理小説をじっくり読むのもよいだろうね。

 今まで、とにかく、元の世界に戻る手がかりが載ってそうな本を捜すことに注力していたので、ある意味、気分転換になるかもしれないなぁ。


 それとも、植物に関する書物を読み直してみるのもいいかもしれない。


 とりあえず、今、読み始めた国内外の不可思議怪奇奇譚を集めた全集の熟読読破はやめようと思う。


 この世界のそういう記録は、誰に読ませようとしているのか、ものすごく、リアルで生々しい記録となっていたんだよ。


 読者に対する気遣いというものが全く無い全集だった。


 今は六冊目を読み終えたところなんだけど、『不可思議怪奇奇譚』は、巻が進むにつれて、恐怖度、描写度、残酷度がマシマシになってくるみたいだ。


 今でさえ、読書中に、後ろで「カサリ」とかいう音がしただけで、「ビクぅつ」ってなってしまうからね。


 この全集、なんと五十巻もあるらしいけど、このペースで恐怖度が増していくのなら、オレに読破は無理だよ。


 なにしろ、オレは枕が変わったら寝れないくらい、繊細なハートの持ち主だからね。


 この全集を読破できる強者がいるのなら、この目で見てみたいものだ。


 あの全集は……マジでヤバいよ。

 全巻読破特典に、『異世界に帰る方法』という本がついていますって言われても、絶対読まない。オレは読まない。読めない。読める自信が全くなかった。


 この世界に来て、オレは初めて知った。


 オレに怪奇ホラーは無理!


 魔王なのに……っていうか、殺しても殺しても復活するって、どっちかっていうと、解釈次第では、オレも怪奇ホラーにカテゴライズされそうだけど、無理なものは無理なんだよ……。

 いや、オレの存在が怪奇ホラーなんて……そんなの、もっと無理だ。

 オレって、思っていた以上にビビリなのかもしれない……。


 六冊目読了時点で、夜のトイレが怖くなる……レベルを軽く越え、ひとりで寝るのが怖くなる状態にオレの怖がりゲージは達していた。


 風呂はすでに入っていたし、リニー少年がついていてくれるので、今は怖くないからね。


 ただ、夕食前に読むもんじゃなかった……と、今のオレはものすごく後悔している。


 特に、王太子の「いれてくれー」と言いながら、扉をドンドン叩くというアレは、ちょっと、薄ら寒いものを感じたし、オレにトドメを刺しちゃったかな?


「勇者様? お顔の色がすぐれませんよ?」

「え……そ、そうかな?」



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